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- 26章 -
※- 冴ゆる星 -※
しおりを挟む『大事に…する…』
テンションのまま一気に喋ってしまった自分が悪いのだけれど、返答もまとめて一気になされ、更には脳内完結し答えだけを手短に話す鈴橋の言葉に理解のラグが発生する。
鬱陶しくないというのは、きっと思うことがあるなら言っても良いと言うことで、不安になる必要はないと言うのは……
自惚れかもしれないけれど、自分が選んだ物ならなんでも嬉しいと言うことで……
『あぁ、もう、可愛ぃ…』
マフラーをギュッと抱き締めたかと思うといそいそと着けていたマフラーを外し、貰ったばかりのマフラーと付け替えていく鈴橋の姿に胸が締め付けられていく。
「がっくん…」
「なに?」
「好き」
「……ん」
「あのさ……良いかな?しても」
「………」
隣に座る鈴橋の唇に指を沿わせると小さく息を飲む音が聞こえ、何度か目をしばたかせた後どこか余裕のある笑みを植野へと向けた。
「そんなの、いちいち聞かなくても良い」
頬に伸ばされた鈴橋の手を触れられる前に掴み制止すると、少し驚いた表情を浮かべるその頬に頬を寄せ、背中に両手を回し力一杯抱き締める。
「……しないの?」
「するよっ! するけど…」
直ぐ近くで小さく笑う息と共に、同じように背中に両手が回された。
呼吸のタイミングやその体温、鼓動までもが触れあう体から伝わり、息づかいさえも聞こえる距離で聴覚や触覚、嗅覚を刺激しあい暫しの時間を共有する。
腕の中に収まる小柄な体から、背中を優しく往き来するその手から、途轍もない大きな安心感と愛おしさが胸に広がり穏やかな時が流れていく。
背中に置かれた手が静かに離れいま1度頬と頬を触れ合わせたかと思うとそれすらも離れていき、熱を帯びた鈴橋の伺うような目が植野を至近距離で見詰めた。
鈴橋の頬に両手をあてがうと真冬と言う割には暖かい。親指でそっと撫でると気持ちよさそうに目を閉じ、伏せがちに開けられた目は重なりあう唇と共に閉じられた。
この間の様に余裕なくがっつく乱暴な物ではなく、ゆっくりとじっくりと、お互いを味わう様に深みを増させ、2人の間からは白い息すら上がらない。
喧騒極まりない前回とはまるきり違う静寂の中、お互いを求める度に響く小さな音に徐々に薄まる理性をなんとか繋ぎ止める。
今回は都合良く止めてくれる何かを期待することは出来ないだろう。こんな時間の、こんな状態の悪い公園に誰が来ると言うのだ。
しっかりしないとと思いながらも、もっともっとと欲張る気持ちが理性を押しやっていくー
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