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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟むお互いの声しか聞こえないしんと静まり返る空間は、そんなわけないと分かってはいるのだけど、まるで世界に2人しか存在していない様な感覚に陥る。
「綾雪」
「ん?」
「一緒に買いに行ったから楽しみ半減させて申し訳ないんだけど…これ」
「なに言ってんの!半減なんてするわけないじゃんっ!一緒に行けて楽しかったし彼氏って言ってくれたのはホントに嬉しかったっ!…ありがとがっくん、一生懸命選んでくれてっ!!じゃぁ、これは俺からねっ!」
自分の選んだリボンで飾られ綺麗に包まれた鈴橋からのプレゼントを受け取ると、開ける前に鈴橋へ用意していたプレゼントを差し出す。
差し出された包みと植野を交互に見やってからおずおずと受け取った鈴橋は小さくお礼を口にした。
「ねぇ、開けてみてよ?」
「……」
コクリと頷きリボンをほどき始めた鈴橋を横目に植野もラッピングを外していく。包装紙から取り出され姿を現したそれを僅かに届く街頭に照らし確認すると、驚いたように目を丸くした鈴橋が植野へと顔を向ける。
「これ、マフラー……だよな?」
「そう!で、これもー」
鈴橋からの贈り物であるそれを頬に当てた植野は幸せそうに笑い、鈴橋と同じ言葉、“ マフラー” と口にした。
「これ、いつ?」
「昨日っ!」
「昨日……凄い、偶然だな」
示し会わせた訳ではなく示し会わせたように同じものを選んでいた偶然に驚きが隠せない様子でマフラーを見つめ続ける鈴橋へ、更なる追い討ちをかける為携帯のライトを鈴橋の手元へと向けた。
「タグ、見てみて?」
「タグ?」
落とされたライトの明かりを便りに言われるがままタグを探し出すと、植野も同じように鈴橋から贈られたマフラーのタグを探し隣に並べた。
「…………これ、は」
「言ったでしょ?スタンダードだから誰かとお揃いになっても分からなそうで良いねって」
「………」
「がっくんがこれに決めた時さ、自分用だったら被っちゃうなぁーとか、俺じゃない誰かへのプレゼントだったら、がっくんがその人とお揃いになっちゃうの嫌だなぁーとか、かと言ってがっくんが一生懸命選んだ物に口出しするのも鬱陶しいよなぁーとか、色々ね、あったけど、俺のって分かった時は心底何も言わないで良かったぁって思ったよね!!」
「………」
「ほんとはさ、誰かにプレゼントあげるなんて殆んどなかったから喜んで貰えるか不安だったけど…お互いを思って選んだものが偶然同じ物で、メーカーまで一緒で、お揃いになるなんて、なんか奇跡的運命っ!!みたいな?凄くないっ!?めっちゃ嬉しー……く、なかった?もしかして?」
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