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- 26章 -

- 幸せの貌 -

「あっ！ ケーキ屋さん発見っ！？」


市ノ瀬へのプレゼントやその他全ての計画を叶えることが出来なかった分、今からでも出来る限りクリスマスらしい時間を一緒にと目に入ったケーキ屋を指差し市ノ瀬の後ろへ回るとその背中を押した。


「ケーキって、明日どーすんだよ？」

「明日は明日の風が吹くっ！！ホールじゃなければ２日連続だって良くない！？」

「昨日も食っただろ。今日も明日も食う気かよ」

「…駄目？？」

「……良いよ、たまには」

「やった！！」


『なんだかんだ、こいつって甘…付き合い良いよな』

背中を押すように入ったケーキ屋では店員がクリスマスならではの帽子やサンタのコスチュームに身を包んでいた。

閉店間際ということもあってかショーケースの中は少し寂しいが、割引がかかっているのは嬉しい所だ。


「睦月はなんにする？」

「チーズケーキ」

「だろうなっww」

「だろうなって」

「だっていつもチーズ系食ってるし！好きだよなっ！」

「好き…あー…確かに言われてみればいつも食ってる気ぃすんな」

「無自覚かよっw 俺はー…どうしよーかなぁー。チョコケーキか、ミルクレープ…フルーツタルトも良いなぁー…」

「まぁ、ゆっくり選べよ」


『んんーっ、全部うまそうっ、めちゃ迷うっ！』

見た目は質素だけれどミルクの優しい甘さが重なりあいふわふわと誘うミルクレープか、甘いタルト生地にこれでもかと乗っかったカラフルなフルーツ達が甘さや酸っぱさのハーモニーを奏でるフルーツタルトか…

『いや、でもここは王道で…』

金粉が散りばめられた周囲が写り込む程の艶っ々チョコレートでコーティングされチョコレート生地にチョコクリームを挟み、チョコの黒さを際立たせる真っ赤なベリーが控えめに乗せられ、これまたチョコで作られた……なんか、こう、オブジェみたいなのが乗っかっている、チョコ尽くしの甘っ甘なチョコケーキか……


「なぁ、むつー………」


迷った時は助言をと市ノ瀬へ話かけるとなにやら無表情に一点を見つめており、何かあるのかとその視線を追って行くと……


「……おい」

「あぁ、決まったか？」

「スケベ親父かよ」

「あ？」


その視線の先にはサンタのコスチュームに身を包んだ女性店員がイートインスペースを真剣に掃除していた。


「セクハラだぞそれ」

「セク……あぁ」


一瞬なんの事を言っているのか分からず怪訝な声を漏らした市ノ瀬だったが、先程まで自分が見ていたものをチラ見した安積に納得したような声をもらした。


「嫉妬？」

「違うしっ」

「そ、残念。でも別に店員見てたんじゃねぇよ」