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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟むそして至近距離で絡み合った自分を見上げる安積の目はどこか不安げに揺れており、引き結んだその口は今にも泣き出しそうなのを堪えているように見えなくもない。
「……なに、急にどーしたよ?」
「なんでもないよ馬鹿っ!あほっ!」
「あ゛ぁ!? なんで逆ギレだよっ!? 」
「逆じゃねーしっ! 全っっ然逆じゃねぇしっ!」
「いやいやっ、全っ然意味分かんねぇよっ!?逆もなにもなんもしてねぇしっ!てか、おまえがっー」
突然の意味不明な行動や発言の数々に文句の1つでも言ってやろうかと口を開いたけれど、やけくそ気味に胸元へ飛び込み力強く巻き付いてきた安積の腕により見事に引っ込んでいった。
「……大丈夫かよ?」
「だからなんでもないってっ! お休みっ!」
「…そう」
『もしかしてー…ぃや。ない、よな…それは』
思い返される一連の会話や行動、好意を寄せられていると知っているのにも関わらず同じ布団で寝ようと提案し、現状その提案通りになっていると言うこと。
その他諸々頭に浮かんだ出来事が一瞬安積なりに誘っていたのかも…などと言うあまり上品ではない考えを市ノ瀬の頭に浮かばせるけれど、それはそんな事などしそうもない彼のイメージが即座に打ち消した。
ならばいったいなにが安積にこういう行動をとらせる原因となったのか?
気にはなるけれど強制的に会話が打ち切られ顔すら上げず静止する安積からは、もうなにも話す気はないと十分に伝わってくる。
突然の奇行は今に始まった事じゃなくそれなりに慣れては居るし、そんな所も一緒に居て楽しい所ではあるのだけれど…降り回されてる感は否めず少し悔しい。
しかしこれ以上の会話は望めなさそうだ。諦めを溜め息と共に吐き出し、胸元に埋まる頭に顎を乗せ目を閉じた。
とにかく明日…既に日付は変わってるので今日の事を考えないと。自分達の進展どうこうではなく、ただ楽しかったって思えてもらえるように。
「安積」
「…………」
「お休み」
「………おやすみ」
『あー…アラームかけてねぇや。まぁ、いいか。起きた時が朝だ…』
さすがに午前中の内には勝手に目が覚めるだろう。鼻先に触れる髪を撫で付けて避けると、そのまま抱え込むようにして眠りに落ちた。
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