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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む「良かった、買えた…」
帰宅し着替えることなくソファーに腰を下ろした安積は綺麗にラッピングされた小さな箱を安堵の表情で眺め1人呟いた。
それもこれも市ノ瀬や偶然にも出会った植野達のおかげだ。1人だったら妥協して他の物になっていた可能性は高く本当に感謝しかない。
植野達と別れたその足で取り置きしてもらっていたお店へと出向くと即座に購入を済まし、その他必要なものを買い揃え今に至る。
皆からの気持ちが籠ったプレゼント。
きっと喜んでくれるだろう。
しっかり皆からの感謝の気持ちも伝えなければ。
でもこれだけじゃない。
やることは他にもある。
1つはさほど問題なく出来るだろう。…多分。
そしてもう1つは…
窓へと目を向けると雪はまだ緩やかに降り続け、ベランダに積もり続けている。
渡すプレゼントもなにをするのかも考えたついたのは昨日の事だ。時間のなさに熟考は出来ておらず不安が残る上、本当にそれが彼の為になるのかも分からない。
それでも伝えたい思いがある。
だから…
気合いを入れるように両頬を叩くと突き勢い良く立ち上がった。
「さて、やるかっ!!」
買い物袋から必要なものを取り出し準備を済ますと、気合いを入れるため腕捲りを…しようとして止めた。自殺行為だ。そしてベランダへと足を向けると今一度外を眺めてから盛大に窓を開け放った。
そして次の日。
「……おはようございます」
「はよ」
時刻は13時半。
寝る直前14時に目的地へ着かなくてはならないのに14時駅集合と伝えてしまった事に気がついた市ノ瀬は直ぐ様班乃へLINEを飛ばしたのだが、既に就寝中だったようで鬼電してしまった為か絶妙に機嫌が悪い。
「あー、悪かったな」
「大丈夫ですよ。伝言ミスは誰にでもありますから。ただ変に起こされてちょっと眠たいだけです。ちょっと眠たいだけです」
「ぁー……あれだ、珈琲でチャラはどう?」
「…缶コーヒーでご機嫌取りなんて軽くみられたものですね」
「あそこの珈琲ショップでどうでしょう」
「……手を打ちましょう」
いつか安積と来た珈琲ショップに立ち寄りエスプレッソとカフェラテを購入すると、各々片手に持ちながら目的地、安積宅へと向かう。
両手でカップを握り暖をとりつつ、時折喉を潤しては体の中からも暖めていく。後ろからついてくる班乃の足取りはとても遅く、瞬きを繰り返す目は今にも瞑ってしまいそうだ。
「…それにしても、どこに向かってるんです?」
「聞かなくても分かってるだろ」
「…まぁ、分かりますけど」
「でもま、一応秘密」
秘密にしてとでも言われているのだろう。しかし通いなれたこの道で勘づかない方が難しい。
安積に悲しい思いをさせない様なんでもないふうに振る舞えるか。勿論それも不安要素ではあるが、安積宅に招かれるのは文化祭のあの一件以来であり正直気まずさもあった。
『良かった…睦月が居てくれて』
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