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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む嘘をついていると言うわけではないが、優しい人達であるからこそ例え快く思っていなくても受け入れてくれるだろう。
そうして受け入れてくれるのは同情…とは違うと思うけれど、少し複雑に感じてしまうのも事実だ。とにかく、自分の事で少しでも嫌な思いにさせてしまう可能性があるのならそれは避けたい。
「や、やっぱり大丈夫。毎年の事だし1人なの慣れてるから!ありがと、気にしてくれt」
「違うっ!」
「はいっ!!」
じっくり話を聞きじっくり考えて喋る鈴橋には珍しく、故意的に言葉を遮りかつ怒気を含んだその声に思わず姿勢を正して敬語が飛び出る。
「そうじゃない…」
「えっと、なにが?」
「お前を気づかったってのも0じゃないけど…」
「うん?」
「それよりも……俺が、一緒に居たかったんだよ」
「………へ?」
「家族とのクリスマスも、恋人とのクリスマスも、大事にしたいって思ったんだよ」
「……がっくん」
「でもお前が嫌ならもういい。帰る」
「えっ、ちょっー」
一方的に会話を終わらせた鈴橋は食べ終わった食器を持ち植野と目も会わせずに立ち上がると返却口へと向かっていく。そんな後ろ姿に慌てて立ち上がった植野も返却口へと食器を返すと、1人そそくさと帰ろうとする鈴橋を即座に追いかけた。
「待ってって、がっくんごめんっ!」
「別に」
「えっとっ、あのさ!」
「もう良い。悪かったな、図々しい事言って」
「や、そうじゃなくって…」
『どうしよ、これめちゃくちゃ怒ってるやつ…』
というか、これは完全に自分が悪い。
誘ってくれた言葉の真意にまでまったく考えが及んでいなかった。気を使ったつもりで、結局自分の事しか考えられて居なかったのだから。
「俺も、がっくんと一緒に居たいって思ってるっ」
「………」
「がっくんの家族も、もちろん大好きだし」
「………」
沈黙が怖い……でもここで言葉を飲み込んだら、自分の事しか考えられてないままになってしまう。
「…皆凄く良い人達だからさ。嫌だなって思っても飲み込んで誘ってくれるだろうなって思っちゃって…」
「……………」
「でも今まで親切にしてくれてたのとか、家族みたいだって言ってくれてた事とか、よくよくちゃんと考えたら、そう思うこと自体失礼だったなって…」
そんな自分の言葉を聞いているのかいないのか。反対側の店を見るふりをしながら顔をそらしてしまって居る鈴橋が今どんな表情をしているかは全くもって分からない。
それでも、ちゃんと伝える為にはそっぽ向いて話すのは駄目だ。例えこちらを見てくれて居なくてもと、その頭頂部を見ながら言葉を続けていく。
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