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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む「凄いですね。あちこち雪遊び後だらけ」
「雪だるま大量発生してるな…」
「こんな馬鹿みたいに寒いのに雪合戦なんて…子供の元気には驚かされる…通り越して最早狂気すら感じますね」
一昨日同様、道路を避け公園内から帰宅していた市ノ瀬と班乃は元気良く遊ぶ子供達を眺めながらゆっくりと歩みを進めていた。
一昨日の班乃の様子からもしかしたら安積同様雪に対し何か思うことがあるのではと思ったが、
一昨日とは違い普通に会話は生まれているし、少しテンション低めである意外特別変わった様子は見られない。
『俺の考えすぎだったか…?』
それならそれで良い。なにもないならそれに越したことはないし、安積のように悲しい思い出のある人間など少ない方がいい。因にそんな安積はHR終わって即帰宅したので今は班乃と2人きりだった。
『そういや安積から頼まれたのまだ伝えてねぇや』
「なぁ、明」
「はい、なんでしょう?」
「明日ーあっ」
「え?」
市ノ瀬へと振り向いた班乃めがけ物凄いスピードで向かってくる何かを横目で捉えた市ノ瀬は、反射的にその何かが向かう場所、班乃の耳元へと手を伸ばす。するとその瞬間バチンと派手な音をたててなにかが、雪玉が盛大に弾けとんだ。
「……ぁ」
「うわぁー…地味に痛てぇ」
飛ばしたであろう人物は全く気がつかずに遊びに夢中になっており、しかし子供が故に文句も言えず小さく舌打ちするに止めた市ノ瀬は手を振り痛みを分散させる。
なんとか直撃は免れたけれど勢いは殺しきれず、結局自分の手が班乃の耳へと直撃してしまった。当たり方が悪ければ相当痛かっただろう。
「悪い、手ぇ当たっ…おい、大丈夫か?」
「……」
「おーい?」
「あぁ…すいません、ちょっと音飛んでました。大丈夫です」
「それ大丈夫じゃないやつ」
いったいなにが起こったのか。瞬時には分からなかったが市ノ瀬が痛そうに手を振って居るのを見るに、どうやら飛んで来た何かがぶつかりそうになった所を阻止してくれたようだ。
耳元で突如鳴り響いた音と、衝撃を殺しれず耳にぶつかった市ノ瀬の手より一瞬音が飛び、痺れがなくなるまで数秒耳を押さえると、無事に音が戻って来てくれた事にほっと胸を撫で下ろす。
「平気そうか?」
「えぇ、すいません、ありがとうございます。全く気がつきませんでした」
「良いよ別に」
「睦月は手、大丈夫ですか?」
「全然平気」
「良かった。しかし…今のはちょっと惚れますね」
「それは…あんま嬉しくねぇなぁ」
手を擦り苦笑しながら再び帰路へと歩きだす市ノ瀬を重い足取りで追いかける。
音がなくなる瞬間。同じような経験を前にもした事がある。それは今みたいな物理的なものではなく、理解の越えた出来事を目にしたあの時。
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