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- 25章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む「これで終わりですかっ?やるからには全力っ!なんですよねっ!!」
「そう言われちゃ名が廃るなっ!!」
「俺等はまだ本気だしてないだけっ!!」
「まだまだやれるよねっ!!!」
「もちろん!まだまだやるよーー!!」
全員で水掛祭りよろしく盛大な水飛沫をあげ、色取り取りの雫がライトに照らされ煌めきながら宙を舞う。
笑い声と悲鳴が入り交じりお腹が痛い。
風邪引くかもとか、明日の学校や仕事はどうしようとか、後先考えない無謀な行いかもしれないけれど、後で後悔するかもしれないけれど、それでもなんか楽しいから良いか。不思議とそんな気持ちになる。
暗い気持ちがいつの間にか吹き飛んでいたことにも気が付く事暇もなく、笑顔溢れる時間が過ぎていった。
それから暫くしてー
「なかなか上手く出来てんじゃない?」
スコップ片手にかまくらの前に仁王立ちした安積は1人呟いた。先程まで一緒になって騒いでいた人達は、今は各々雪像に向き合っている。
盛大に水をかぶったせいで穴を掘ったらつぶれるのではと心配していたけれど、馬鹿みたいな大きさのおかげでそれは杞憂に終わった。
「お疲れ、聖。楽しかった?」
「楽しかった! ってか今までどこ行ってたの?」
「俺の仕事は仕上げだからねっ!」
いつの間にか姿を消していた月影が水筒を右手、スコップを左手に持ち颯爽と笑顔で現れる。はしゃいでいたせいかあまり気にしていなかったが、冷静さを取り戻すと少しだけ居ずらかったのは確かで…
社内で休んでいるのか何用かで別の所に居るのかは分からないが、わざわざ連絡してまで探すのも子供っぽい気がして来るのをただただ待ちわびていたのだった。
「なかなかに面白く出来てるじゃない」
「なんか色混ざりすぎて良くわからなくなってるけど、これはこれで芸術なのかな?」
「芸術だと思えば全部芸術だよ!芸術は爆発だっ!」
「爆発しすぎてる気もするけどw」
「それで良いのっ! あとはやるから、聖はちょっと休んでおいで」
そう言って差し出された水筒をありがたく受け取り中身をコップに注ぎ込む。気持ちの良い湯気と柑橘系の香りが立ち上ぼり、顔面にあたる熱気に目を細めた。
火傷しないよう控えめに口に含むと一気に広がった甘味のある爽やかな味が忘れていた空腹を思いださせる。
『はちみつ…柚子かな?おいしー…』
喉を潤し暖をとりながらしゃがみ込むと、熱心に雪遊びしている大人達をぼんやりと眺めた。
『本当に、楽しそうにやるなぁ…』
呆れと関心を覚えながら兄へと目を向ける。楽しそうにやっているのは兄も同じだ。今はほぼ完成とも言えるかまくらの中に入り込みテーブルの様な物を作っている所で、既に椅子替わりの段差も作られておりちょっとした食事だって出来そうなくらいに凝っている。
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