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慰弦

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- 25章 -

- 幸せの相違 -

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食紅と言えば青、赤、黄色のイメージしかなかったが、見たことないような色まである。まさかこの日の為に揃えたのだろうか?
でも兄なら意気揚々と購入したとしても不思議でもなんでもない。というか、なんなら容易に目に浮かぶ。


「じぁ…黄色で」

「らぶりーヒヨコカラー入りましたーっ!」

「「ありがとうございまーーっす!!」」


『ヒヨコって…』

ヒヨコの単語と無駄に明るいノリに、文化祭での事が頭を過る。植野のクラスでアヒルのおもちゃに惜しげもなく大人の財力で挑む月影と秋山の姿が。

良い事を言ったように見せかけ押し付けられただけじゃないのか……とちょっとだけ思ったりもするあのアヒルは、捨てるのも忍びなく今は風呂場に鎮座している。

たまに浮かべて眺めてるのは秘密だ。

類は友を呼ぶと言う言葉は本当なんだと、彼らを見ているとしみじみと実感させられる。
もしかしたら誰かに感化させられたという事もあるかもしれないけれど、どちらにせよ兄のまわりで言うと悪いことではないように感じた。

友を呼んだ類の最初は誰なんだろう?
そんな卵が先か鶏が先かの様な事を考えながら、
受け取った食紅を彼等に習いバケツに入れ、手を入れるとあまりの冷たさに咄嗟に引っこ抜いた。

これを笑いながらやってしまう彼等には一周まわって関心さえする。やると言った事に若干の後悔が頭を過る中、突如真横から掛け声が掛かった。


「準備はいーい!?」

「えっ?」

「「「おっけー!!」」」

「えっ、えっ!?」

「行くよっ!!」

「あのっー」

「「「せーのっ!!!」」」

「ちょぉっ!!!」


その掛け声と共にいつの間にかかまくらを取り囲む様にして立っていた彼等から激しい水飛沫が上がった。予想もしてなかったいきなりの展開に頭が付いていかない。

『………ぃっ、今、なにが』


「っ………!!」

「冷たぁーーーっ!!」

「ちょっと飛ばしすぎだって!!標的はかまくらだよ!?センターにいれてスイッチぃ!!」

「めっちゃ飛び越えてんじゃんっ!つめてぇーww」

「皆顔面カラフルすぎっ!うけるーっww」

「やだっ、もーこんなん笑うしかないじゃんw」


『え、なにこの人達?なんなの?馬鹿なの??全然笑えないんだけどっ!?』

大抵の事には合わせていける自信はある方だけれど、流石にこれにはそんな感想を真っ先に持ってしまった。

こんな真冬に外に放置していた真水をカラフルに染めてぶちまけて、かぶってかぶらせて、腹を抱えて大爆笑している。

もう、最早これは雪遊びの域を越えているのではないだろうか……
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