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- 25章 -
- 不香の花 -
しおりを挟む涙が流れ止み静寂が訪れ暫くした頃。
体力を使い果たしたかのようにウトウトとし出した安積をひと撫ですると、心に居座っている名残惜しさに手を振り体を離す。
ぼんやりと見上げてくる目が痛々しくて、そっと手を添え閉じさせるとそのまま体をベッドへと横たえさせた。
「先寝てろ。風呂入ってくるから」
「ぅん」
布団をかけてやり糸が切れたように寝息をたて始めた姿を確認すると静かに部屋を後にする。
なんだかんだと色々話したけれど、疑問はまだ残っていた。
“ 危ないし怖いから嫌い ” と言っていたのに、送りを断り急かしてまで帰路に着いたのに、それなのになぜ安積自身は出歩いて居たのか。なぜ自宅からこんな遠い所まで来ていたのか。
自ら嫌いな物に飛び込んで行くその理由は?
階段を下りリビング前を通ろうとした時、中から呼ぶ声が聞こえて足を止める。視線を向けると風呂上がりだろう姉が景気良く牛乳を一気飲みしていた。
「布団、忘れてた。来客用出す?」
「いや、いいよ。もう寝たし」
「………事後?」
「…頭沸いてんのか?」
『なぜそうなる?』
正直したいのは山々けれど家族の居る家でなんてしたくない。というか残念だが自分達はそれよりもまだまだ全然前の段階だ……
「まぁ、どっちでも良いけど」
『良いのかよっ!?
…………
良いのかよっ!!?』
驚きすぎて心中2度ほど突っ込みを入れてしまったけれど、受け入れてもらえるなら好ましいことはない。
「…お前、腐女子?ってやつ、だったのか」
「…ちょっと違う。初恋女の子。今は男が好きだけど。だから偏見ないだけ」
「…そう、だったのか」
「忘れちゃった?」
「なにをだよ」
「別に」
忘れたもなにも姉が同性を好きだったことがあったなんて、ずっと一緒に暮らしてきてそんなの初耳だ。こんな姉でも、姉は姉なりに今まで苦労して来たのかもしれない。
「あと」
「ん?」
「呼ぶなら貴腐人ってお呼び」
「…そこまで年食ってねぇだろ」
「響きが良い」
「そーですか」
「でも」
「なんだよ」
「好きなのはNLかBL。道具嫌い。やっぱり棒とあn」
「そこまで聞いてねぇよっ!?品性どこ置いてきたっ!?」
『なにが貴腐人だよっ!!不服そうな顔すんなっ!』
歯に衣着せないのにも程がある。物凄い反面教師っぷりに呆れて言葉が出ず、出るのは溜め息ばかりだ。そう言うのは仲間内で話してくれて…
それに、別に男が好きな訳じゃない。安積が好きなだけだ。
『ほんと、こいつどうにかしないと…』
「じゃぁ、私寝る」
「あっ」
「なに?」
「あぁ、いや……」
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