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- 25章 -
- 不香の花 -.
しおりを挟む「えっと、安積です。すいません、こんな格好で」
「別に良いけど。取りあえず上着」
「えっ?」
「上着と帽子とマフラー、あと靴下も」
「えっと」
「床濡れるし風邪引く。乾燥機突っ込んどくから。あ、ズボンも」
「ずっ!?」
「おいっ!」
「ん?」
濡れた服を受け取るために差し出した姉の手を半ばひっぱたくようにして下ろさせた市ノ瀬が安積との間に割って入ると、ひっぱたかれた姉は手を擦りながらなんだか拗ねたような、腑に落ちないような表情を浮かべた。
『………性格に、難ありって』
「お前なっ!」
「なに?」
「なに?じゃねぇよっ!前から言ってっけど少しは距離感考えろっ!!」
「なにそれ?」
「なにそれじゃねぇよっ!?」
『確かに…これは睦月とは違う意味で難あり、かも…』
「友達だって言うから」
「だからって服脱がそうとすんな!」
「だって風邪引く」
「そう言う問題じゃねぇっ!」
「ならどういう問題?」
「~っ、もう良いからっ!俺がやるからっ」
「そ? あ、一緒に足湯でもしたら?睦も冷えたでしょ」
「そっ……れは良いな」
「睦月っ!?」
『姉弟かよっ!?姉弟だけどっ、姉弟だなっ!?』
寒いから早く上がりなよ~と言うのんびりとした言葉を残しリビングへと消えていく市ノ瀬姉の姿を呆気にとらながら見送ると、盛大な溜め息をついた市ノ瀬へと視線を向けた。
「えっと…良い、ねぇちゃんだな」
「どこがだよ…ったく、いつもいつも…とにかく寒いしさっさと足拭いて上がるぞ」
「……うん」
「あっ!!」
「Σっ!?」
「んだよ今度はっ!!」
突如大きな声が上がったかと思うと、リビングからひょっこりと姉が顔をのぞかせた。
おでんの容器を大切そうに抱えながら…。
「君…安積くん、だっけ?乾燥時間かかるし、車出すのも怖いし、今日は泊まってきな」
「やっ、そこまでご迷惑かけるわけにはっ」
「こんな時間に未成年に外出られる方が迷惑」
「あ、はい……」
「着替えは…私の貸す?」
「!?」
「俺の貸すよっ!」
「…大丈夫?」
「なぜっ!!」
『やばっ、思わず突っ込んじゃったっ』
「サイズ的にそっちのが良いかなって」
「それはっ…確かに」
『遠慮なしっっ!?』
安積の突っ込みに気分を悪くするでもなくさも当然のようにさらりと返答した姉の隣で、少し納得したような顔した弟が実に腹が立つ……こんな所でも兄妹感出さないでほしい。地味に傷つく…
『ってか懐柔されてんじゃねぇよっ!!』
足湯と言い今と言い、守る様に反論してくれるわりには直ぐに言いくるめられてしまう辺りに兄妹の力関係が見えた気がした…
「あ。そういえば安積くん。晩ご飯は?」
「軽く食べたので大丈夫です」
「軽く…」
「…あの?」
「おでん、食べる?」
「食いかけ渡す馬鹿居るかっ!」
「そう、良かった。私もおでん食べたい」
「そういう問題でもねぇよっ!?」
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