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- 25章 -
- 不香の花 -
しおりを挟むついさっき盛大にずっこけて居たのは誰ですか?とでも言いたそうな顔に、それ以上言わせまいと市ノ瀬は即座に言葉を被せた。呆れたような視線はあえてスルーする事にする。
「本当に、油断禁物ですからね」
「うん。十分気をつけて帰るよ。あっきーも、気をつけてね」
「えぇ、ありがとうございます」
笑顔で手を振り人の群れに消えていく班乃の後ろ姿を並んで見送るが、その姿が見えなくなった後も安積は動く事なくただただ心配そうに人混みを見つめ続けていた。
「…なぁ、お前らー」
「あぁ、ごめん、ぼっとしてた。俺達も帰ろ」
「…あぁ」
『これは、聞くなって事か』
問いかけを無視し帰路へと向かうのは、そう言うことなのだろう。分かりやすすぎる態度に最早溜め息も出ない。
力になりたいとは思っていても本人が望んでいないのなら迷惑にしかならない。ならせめて気を紛らわすなにかをと考えながらいつも通り帰路を外れ安積宅への道へ足を向けようとした。
その時。
「あのさっ!いつもありがとう!でも暗くなると危ないし心配だから、今日は睦月も早く帰ってよ」
「…良いのか?」
「ん? うん」
「………」
「ほら、早くっ!」
様子のおかしい安積をこのまま1人帰らせるのは気が引けて足を動かせないで居ると、止めるなとでも言いたげに体を回され背中を軽く押し出される。
その力に2歩ほど前に進むと、後ろを振り返った。
「お前がー」
「うん?」
「笑えないなにかがあるなら…」
「……」
「…なんでもない」
辛いなら辛いと言え
1人で背負うな
自分にも背負わせろ
あの日伝えた言葉は届いていなかったのだろか?
自分では力不足と言うことなのか?
1人ではなく班乃と共有しているから自分の助けなど必要もないという事なのかもしれない。
それとも、自身に影を落とす何かを言葉にする事が難しいのだろうか?
それとも
それともー
思い浮かぶ可能性に言葉を飲み込み、ざわつく心を誤魔化すように安積へと傘を差し出した。どれが理由だったにせよ、今の自分が安積の言葉を聞くことは難しいのだろう。もっと頼れだなんて押し付けがましく言うつもりもない。
言うも言わないも、安積の気持ち次第でしかないのだから。力になりたいとは思っていても本人が望んでいないのなら迷惑にしかならない。ならせめて気を紛らわすなにかをと考えながらいつも通り帰路を外れ安積宅への道へ足を向けようとした。
その時。
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