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- 24章 -
- 銀杏の葉 -
しおりを挟むその仕返しが成功したのか鈴橋は急に黙り込む。
ここで黙ると言うことは、“色々な事”の言葉に含まれた意味を鈴橋も理解していると言うことなのだろう。付き合っているのだから、当たり前にその内自然とそう言う事もするわけで。
…したいわけで。
しかし口元に手を当てたまま難しい顔をし長考を見せた鈴橋の反応に、少し早まったかと焦りが沸き上がる。ここで拒否されたら立ち直れない…
色んな姿を見たいとはいえ、なにもしない内から拒絶する姿を見るのは遠慮したい。
「えっと、ごめんっ!今のはー」
「じゃぁ、準備しとかないとな」
『Σ なんのっ!?』
当たり前にその内って思ったけど!思ってるけどっ!?準備ってなんのっ!?お泊まりの!?
それともっ………!?えっ、なんのっっ!??
「ほら、電気消すぞ」
「あっ、はいっ」
焦る植野をよそに電気のリモコン片手にさっさと布団に潜り込んだ鈴橋に、植野も準備された布団に潜り込んだ。
電気が消されると同時に目を閉じる。
が、頭が活動しまくってしまってどうにも直ぐには寝付けそうもない。それでもなんとか、と暫く頑張っては見たものの、先程の発言の衝撃が凄まじすぎて難しく…
「がっくん」
「……なんだよ」
「寝れない」
「……はぁ??」
貴方のせいです。
貴方の。
そんな面倒くさそうにしないで下さい。
ってか、何ちゃっかりちょっと寝付いてるんですか。
盛大なため息と共に身じろぎする音が聞こえたかと思うと、布団の中に滑り込んできた何かが手を握った。
「子供じゃないんだから、寝かしつけはしないからな」
「う、うん、だいじょうぶ」
「おやすみ」
「……おやすみ」
『こんなん、寝れるわけないっ!ずるいっ!!』
激しく音を立てる心臓を落ち着かせるのは最早諦めた。無理ですもん。ならば出来るところまでやってやりましょう。体を横へと向け、我関せずといった様子で目をつぶる鈴橋へと声をかけた。
「ねぇ」
「なんだよ早く寝ろ」
「そっち入っても良い?」
「下がれ下郎」
「辛辣っ!?」
出来るところまではどうやらここまでのようだ…
『かなし……』
だが、辛辣な言葉からは想像も出来ないほど優しく握られた手から、温もりと安心感が急激に襲いかかってくる。
波風を立てていた頭の中はいつの間にか静かになり、気づくと安らかな眠りについていた。
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