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- 24章 -
- 銀杏の葉 -
しおりを挟むクッションに座り込んだままいつの間にか考え事に没頭してしまっていたようだ。
鈴橋の声で現実に引き戻されるが、いつの間にか側にしゃがみこみ心配そうに見上げるその顔があまりにも近すぎて…咄嗟に大丈夫と口にしたがあまり大丈夫ではなかった。
そんな様子に気づいてか気づかないでか。無遠慮に隣へ座り込み適当に流してるテレビを眺め始める鈴橋を全身で感じながら、なんとか気持ちを落ち着かせようと自身もテレビへと視線を移す。
この前まではこの時間には川の時で寝転がり、爆睡する紗千を起こさないよう静かに会話を楽しんで居たものだが、間もなく小学生になるのだからと紗千は今、隣の部屋で1人寝練習中だ。
寂しくなり起き出してきて一緒に寝る時もあるのだけれど、意外とその頻度は少なく逆に鈴橋が寂しがる時があるくらいで。
自他共に認めるシスコンな上、妹もそんな兄にベッタリだったので分からなくもないけど、正直…
正直、ちょっと、ありがたい。
勿論、寂しくて起き出して来た妹に密かに嬉しそうにする兄も、あやされて安心したように眠る妹も、そんな兄妹の居る和やかな風景や2人のことも大好きだ。
けれどそれ故に、鈴橋と2人きりで居られる時間が殆どなかったのを少し物足りないと思っていたのは嘘のつきようがない事実だ。
鈴橋家族が居る中で出来ることは限られているけれど、こうして2人で居られる時間が増えたこと、素晴らしい事に鈴橋家全員が必ずノックし返答を待ってくれるので安心してくっついて居られるのも嬉しい。
『家のはノックなしで突撃してくるからなぁ…』
プライベートなんてあったものじゃない。
けれどその距離の近さは生活リズムが違い1人で居ることが多い自分を母なりに思ってのコミュニケーションなのだと、そう思えるようになってからは幾分か気にはならなくなったのだけど。
『そう思わせてくれた鉄兄には感謝だなぁ』
全員がノックをしてくれる鈴橋家。
ノックなしで突撃してくる自宅。
ある程度のいちゃつきなら鈴橋家の方が安心と言えば安心なのだけれど…正直いつまでもある程度で我慢できる自信はない。
『とすると…時間帯によってはうちの方がなんの気も使わないで過ごせる、のかも?』
常に誰かしら居る鈴橋家とは違い、母が仕事へ出掛けていれば誰もいないのだから。
今はまだ妹の面倒もあり難しいかもしれないけれど、母の居ない時を見計らって招待するのも全然ありだ。ありよりのありだ。
むしろ高校卒業したら進路によっては一人暮しする可能性だってあるのだから、そうなったらやりたい放題だ。
『って、やりたい放題ってっ!!』
いや、でも健康男児としてはこれは正常なんではないでしょーかっ!?
というか、それを言うなら鈴橋だってそうなわけで、もしかして鈴橋だって……
あらぬ想像に駆り立てられながらチラリと隣に座る鈴橋を盗み見…
「ごっ、ごめんなさいっっ!?」
「…は?」
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