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- 24章 -
- クレープ -
しおりを挟む「そう? ま、自由に選べよ。順番すぐだから早くな」
「あー…お前の言った通りのにするわ」
「別に好きに選んで良いけど」
「や、ナイス提案だと思って!シェアしよシェア!」
それで良いなら、と言いつつもどこか腑に落ちない顔で自分を見つめる市ノ瀬に、“順番まだかなぁ!”とわざとらしく発すると列へ意識を向けてくれるように顔をそらした。
顔が熱い…先程とは少し違う意味も+されて。
確かにどこかで見かける度に買って飲んではいたけれど、少し恥ずかしくて好きだと言ったことはない筈だ。それなのにバレている気恥ずかしさと、知らず知らずのうちに自分を理解してくれているという嬉しさで心臓がうるさい…
それだけじゃない。ナチュラルにシェアを申し出てくれたこともだ…ハニーカフェオレの時もそうだったけれど、なんというか…パーソナルスペース内に受け入れていってくれてるような。
同じ釜の飯を食わせてくれるというか…親密感や信頼感と言うものが深まって行く気がして、どうも落ち着かない。
『困ったな。
…また、嬉しいをもらってしまった』
ーーかーーさかーー
「安積っ!」
「はいっ!?」
「注文」
「あっ!えっと!!クレープくださいっ!!」
「「………………」」
「えっと…どちらの、クレープ…にいたしますか?」
「…イチゴアイスとベリーベリーで」
「かしこ、まり…ましたっw」
「~~~~~っ/////」
考え事をしていたらいつの間にか順番が来ていたようで咄嗟に出た言葉と言ったら…
赤面しつつ言葉を詰まらせた安積に代わり呆れた様子で市ノ瀬が注文すると、出来上がりを知らせるベルを受け取り席へと着いた。
「……笑ってんじゃねーよっ」
「いやっ、今のは笑うだろ今のはっ…ww」
一応公共の場なのを配慮してなのか、テーブルにおでこをくっ付け口と腹に手を添えて押し殺したように笑う市ノ瀬の姿を恨めしげに見つめる。
店員でさえも注文を繰り返す声が隠しきれない程に震えていたし…思い出すと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
それもこれも全部市ノ瀬のせいー
いや
市ノ瀬の一言一行に意識を持っていかれて考え込んでいた自分のせいだ。
もしかしたらこれが市ノ瀬が言っていた、“好きにさせる為ならなんでもする”って事なのだろうか?
まんまとそれに乗せられてしまっていると言うことなのだろうか?
他人なんか興味ないみたいな顔してるくせに、自分には……
そしてその事が、嫌ではないと思ってしまうなんて…
「もー無理っ!!」
「俺は最高に楽しいけどなぁ」
「うるせぇよ!」
「可愛いな」
「はぁ??」
「ば可愛いなぁ、お前はw」
「っ、うっ、るせぇよっ!!」
からかってるのか本気なのか分からないけれど、そんな嬉しそうな顔して笑わないでほしい。
こんなんじゃ心臓がいくつあっても足りない。
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