601 / 1,055
- 23章 -
- 終幕 -
しおりを挟む「やべぇー!ちょー懐かしー!!」
「そうですねっ、一緒に居たくないから早く帰ってって言われましたのも懐かしいです」
「あーっ、言ったわっ!言ってたわ俺っ!!wってか意外と台詞覚えてるもんだな!スゲー!!」
「たくさん練習しましたもんね」
自分の知らない頃の話で盛り上がっている2人の会話に入り込めず、市ノ瀬はボンヤリとその一連を眺めるしか出来ない。2人に自分の知らない思い出があるのは当たり前だししょうがない事でもあるのだけれど、やはり少し寂しく感じー
そうになるが、突如楽しそうに笑っていた2人のタイミングを合わせたかのような視線を一身に受け、思わず1歩後ろに下がった。
…なにやら2人して少し悪い顔をしている気がする
「え、なに?」
戸惑う市ノ瀬を無視し何かを企むような表情で目の前まで進んできた安積が、今度は少し切ない顔を作りー…
「安心してくださいな。この声は、ヒバリではなくナイチンゲール。まだ夜明けではありません。心配ないわ。安心してください」
ロミオとジュリエットの台詞を読み上げた。急な事に戸惑うが、それ以前にそれはロミオに対する台詞であり、この場合は自分ではなく班乃へと向けるべきだろう。
「いや、俺本来マキューシオだし、言うなら明にー」
「安心してくださいな」
「いや、だからー」
「安心してくださいな」
『駄目だこれ。多分、台詞返さないとそれ以外喋らないやつだ…』
しかし先程の班乃と安積の寸劇に多少の目が集まってしまっており、それとなく此方を見ている数人の視線を感じる。
しかし、この状況を打破するには台詞を読み上げるしかないだろう。安積の後で堪えるように笑っている班乃が少し苛立たしい…。
半ば自棄糞で大きく息を吸い込むと安積の手を取った。
「いいえ、ジュリエットっ。こっ…これはヒバリの声だっ…!夜の灯火は燃え尽き、朝の使いが私たちの別れを告げに来たのです。私を守る月夜の衣は、光輝く太陽の前に消え失せてしまいました」
『くさい!台詞がくっさい!!本番中ならまだしも公園でなんて…恥ずかしくて死ねるっ!』
もう満足だろ!?と手を離そうとするが、片方を安積が力強く掴んだまま離さず、そしてもう片方をー
班乃が握った。
「あ゛ぁ?」
「いいえ…いいえ。あれは太陽の光なんかじゃないわ。そうじゃない。まだ大丈夫。まだ大丈夫よ。まだ行かないで…私の側に居て……」
「なんで明がジュリエッ…」
「私の側に居て…」
『お前もかよっ!?ってかなんでジュリエット2人なんだよっ!?』
顔をひきつらせながら、なんとか次の台詞を絞り出した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる