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- 23章 -
- 青の終焉 -
しおりを挟む昼食を終え班乃達と別れた後、僅かに残った昼休みを植野は鈴橋の席近くで過ごす。授業の準備をしたり予習をしたりとあまり構ってくれない事の方が多いけれど、話しかければ普通に返してくれるし側に居れるだけで満たされる物もある。
好きは偉大だ。
「ねぇ、がっくん」
「なに?」
「珍しいよね、行っても良いって言うの」
「珍しい?……あぁ、クレープの話?」
「そうそう」
実はずっと気になっていた事だったが、会話の流れてきに聞きそびれてしまっていた。
人混みや騒がしい所が嫌いな鈴橋が自ら了承するのはかなり珍しい。秋山のカフェに行った時も強引に誘ってやっとだったのに。
すると植野を見上げた鈴橋がなんだか不思議そうな顔でじっとその目を見詰めた。
『…………っ』
何か考え込んでいるようだが、その間もずっと目を反らさないものだから…
更には慎重に言葉を探すタイプなものだから…
長く続くその時間に心拍数が上がって仕方ない。
「お前がー」
「ぁっ、うん?」
「行きたがりそうだなと思って」
「…えっ?」
「だから、少しは慣れておこうかと思ったんだけど、お前も行きたくなさそうだし、別にいいかー」
「えっ!待って!いっ!行きたい行きたいっ!」
「そう。分かった」
火照る顔を誤魔化すように鈴橋に背を向けた植野は窓の外側へと体を向け縁に腕をのせた。
この気持ちはなんだろう。小学生の頃だかに合唱で歌った歌が脳裏をめぐる。目に見えないエネルギーの流れが、足に腹に胸に、喉に伝わって、声にならない叫びになる。そんな歌。
好きは、偉大だ………
「楽しみだなぁー!」
「そうだな」
『同意してくれるんだっ!?』
班乃の気分転換に、というのも勿論あったのだけど、鈴橋と行くための下見、という意味も少しだけあって…
『最初から、がっくん誘えば良かったかな』
それでもそんな小さい後悔は、数ヶ月後の来るべき日への高鳴りに書き消されて行くには十分だった。
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