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- 23章 -
- 青の終焉 -.
しおりを挟む昼休みも終わりに近づき教室へと向かう最中、班乃が安積の服を摘み引き留めた。植野にも聞きたいことがあるのだが、今はこっちの方が最優先だ。
不思議そうに班乃を振り返った安積は一度前を歩く3人を一瞥してから再び班乃へと向き直る。
「どーかした?」
「…前に保健室でしたお願い事覚えてますか?」
保健室という単語に顔が曇る。
本心を偽り自分を受け入れると言った安積に
本心を偽りその提案を断った自分がした頼み事。
彼を傷つけることは分かっていても
それ以上に傷つけてしまうのを恐れた。
でももう、それを恐れる必要はない。
「ぁ…あぁ、うん。もちろん。暫く距離置きたいってやつだよね?…ごめん、俺駄目だった?」
「いえ、そうではなくて、ただ、もう大丈夫ですって伝えようと思って」
「……え?」
「悲しませるような事を頼んでしまってすいません。我が儘、聞いてくれてありがとうございました。貴方を酷く傷つけたこと、本当に申し訳ないと思ってます。虫の良いことだとは分かってるのですが…また前みたいに仲良くしていただけると嬉しい、です」
驚いたように班乃を見つめパチパチと瞬きを繰り返した安積は、すぐさま眉間にシワを寄せぱっと視線を床に落とした。
こんな最初から最後まで自分勝手なこと、安積が怒ったとしてもしょうがない。けれど市ノ瀬とも約束をしたのだ。もう悲しませることはしないと。
「……良いよ。でも1個、条件がある」
「条件、ですか?」
絞り出したように呟いた安積はゆっくりと顔を上げしっかり班乃と視線を合わせると、すっと人差し指を立て手を顔の高さまで持ち上げる。
条件交換を持ち出されるとは予想もしておらず驚く班乃だったが、安積からの条件を断る資格など自分にはないと無言で頷き耳を傾けた。
「文化祭から今日までの事、お互いに色んな事情があって、お互い、どこか間違ったんだ。どっちが悪くてどっちが悪くないなんて話じゃないと思う。だからさ、もうこの事で自分を責めたり謝ったりするのはなしにする事。俺はもう、気にしてないよ。でもあっきーは真面目だから…そう言ってもいつまでも気にしちゃいそうだもん。だから、それが条件」
「…それで、良いんですか?」
「勿論。だから俺も謝るのはこれで最後っ!酷いことして、嫌な思いさせてごめんね」
「…僕の方こそ、傷つけて裏切るような事、とか、その、色々と、すいませんでした」
謝らなければいけない事が多すぎて上手く言葉に出来ないのが歯痒いが、それでも笑顔を返してくれた安積にぎこちなく笑い返した。
彼がお互いにと言ったのは、自分だけを責め続け辛い思いをしないようにという配慮なのだと思う。
それでも、非がないとは言わずにお互いどこか間違ったと言うその言葉で、反省し成長出来る可能性も残してくれているように感じる。
優しさと、強さと、厳しさと、様々なものを兼ね備えている、そんな彼の親友でいられて良かったー
「じゃ、約束ね」
「はい」
そんな彼を、好きになれて良かった。
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