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慰弦

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- 23章 -

- 青の終焉 -

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「それはそうと、実は俺、がっくんと綾に言いたいことがあって」


急に真剣な顔をし話題を切り替えるその様子に、鈴橋と植野は不思議そうに顔を合わせ、“ なに ?” と短く返した。別に計ったわけではないのだけれど、その声が綺麗にハモってしまい少しだけ気恥ずかしい空気が流れる。

しかしそんな2人を気にする余裕は安積にはなく、一度目を閉じてから大きく息を吸い込み気合いを入れた。


「色々とあって黙ってたけど、色々とあってやっぱり2人にも知ってて貰った方が良いと思って!」

「…恐ろしく内容のない文章だな」

「がっくんっw取りあえず続き聞いてあげよっw」


そんなやり取りが密かにあった事などつゆ知らず、見本のような正座をした安積はちらりと市ノ瀬へ視線を送ってから、再び2人へ向き直った。 


「実はさ…俺、喘息なんだよねっ…!」


それは一世一代の告白を思わせるような気合の入った言葉だったのだが、それとは逆に鈴橋が呆れて言葉も出ないといった表情を浮かべ、植野は少し困ったように笑った。


「あー、やっぱり?大変そうだよねぇ…」

「…えっ?」

「薬の常備場所は?」

「……えっ?あれっ?」

「薬は持ち歩いてんのかって聞いてんだけど」

「あっ、えっと、鞄か制服のポケットに」

「どっちかにしろよ。制服のが良いけど…それか両方」

「えっ、じゃぁ、りょーほぅ……」

「分かった」

「体育も出来ないって、結構なんだよね、やっぱり。なんかあったら無理しないで言ってね」

「……うん、ありがと…って、えぇー……?」


自分的にはかなり重大な事を言ったはずなのに、あまりにもあっさりとした2人の反応に拍子抜け感が隠せない。


「なんだよ? まだなにかあるのか?」

「や、なにかって…ほら、なんかこう、もっと吃驚するとか、怒るとか…なんか、こう…ねぇ?」

「ねぇ、って言われても…言いたくないみたいだから聞かなかっただけで、そりゃ2年近くも体育見学してたらもしかしたらって思うでしょ。ねぇ、がっくん」

「そうだな。保育園にも喘息の子は居るし、なんとなく予想は。まぁ、薬の場所も知れたし言ってくれたのは良かったけど……」


「せーちゃんさ、本当に隠せてると思ってたの?」
「安積お前、本当に隠せてると思ってたのか?」

「…………」


先程と同じく声を揃えた鈴橋と植野視線が安積へと突き刺さる。

そんな2人の姿からは、大きな耳の、ギザ歯で青い色をしている、やけに声がしわがれたあの子が可愛らしさを備えつつ、どこか軽侮を含ませ首をかしげる姿が頭に浮かんだ。

軽侮は鈴橋、可愛らしさを植野が立派に引き継ぎ、2人して同じ角度で首をかしげている。


「…………あっきぃー、分裂したぁ」

「なぜ僕に?…というか分裂って…」
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