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- 23章 -
-真誠-
しおりを挟む「じゃ、また明日ね!あっきー!」
「はい。気を付けて帰ってくださいね」
久々に3人で帰路につき駅で予定通りに班乃と別れた。やはり班乃と安積の間には微かな距離を感じざるおえない。そんな帰路だった。
別れる前にチラリと班乃へと視線を送ると小さく頷きが返され一応別れの挨拶を交わすと安積と2人歩き出したのだが、途端吐息ともとれる程の小さな溜め息が隣から聞こえてくる。
そんな微かな行動ですら感じ取れるようになってしまったからこそ、心配は次々と増えていってしまう。
『早くどうにかしないと』
そう思う反面その溜め息が自分と居る時には肩肘張らず自然体で居てくれる証拠なのだと感じられ、じんわり沸き上がる優越感に自己嫌悪を感じる。
『…嫌な奴』
とはいえそんなものだろう。誰だって。
『いや、どうだろう。安積はこんなこと思わなそうだな。安積が異質ってだけかもしれないけど』
少しばかり下の方にある安積の顔をチラ見するとタイミングよく視線が合い、やたら嬉しそうな笑顔を向けられ曖昧に笑い返すと思わず視線をそらした。
今日は目が合うとやたら笑顔を向けてくるので心臓に悪い。機嫌よく居てくれるのは嬉しいけれど、これはこれで心臓に悪い…。
「じゃぁ、今日は用事あるからこのまま帰るわ」
「えっ?あっ、あぁ、うん、そっか…分かった」
『残念そうな顔すんなよ…』
少し項垂れたその頭に手を伸ばし、叫びだしそうになる気持ちを全部込めてがしゃがしゃと髪をかき乱した。以前なら、なにすんだ!っと反発したりして来たものだが…
「へへっ……また明日っ!!」
「…おう」
頭に手を当て微かに頬を紅潮させると、眉を下げ笑った安積は元気良く手を振り自宅へと去って行く。
『あー……ヤバい、好き…ちょーすき』
その後ろ姿を見送りながら別れたくない気持ちに鞭を打ちバス停へと足を向けると、暫く歩いてから踵を返し今来た道を戻る。念の為安積の帰路を覗きこみ居ないことを確認してから班乃の待つ場所へと向かった。
『そういえば、どこで待ってるか聞いてねぇや』
駅構内を探すのは時間の無駄すぎる為連絡しようと携帯を取り出すと、そこには既に一件の連絡が来ていた。
『ー…まぁ、確かにな』
これから話そうとして居ることは確かに人が多い所で話す内容ではない。近くの公園で待っているとのメッセージに従い踵を返すと公園へと向かった。
到着するとさほど探す事なくブランコにぼんやり座り込む班乃を見つけ声をかける。向けられたどこか弱々しい笑みに申し訳なさを感じつつ、ゆっくりと近づくと隣へと腰を下ろした。
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