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- 22章 -
- 見えない -
しおりを挟むドアが閉まる音ど同時に、口を開いたのは安積だった。
「お姉さん、容態はどう?」
「変わりなく、です」
「そっか…心配だね」
「えぇ」
勿論、姉の事は話そうと思っていた。
でも、今自分が真っ先に話さなくてはならないのはー
「安積、一昨日はー」
「とりあえずさ、突っ立ってないで座りなよ。疲れるでしょ」
言葉を遮りベッド脇に置いてある椅子を指差す。
側に行っても良いのだろうか?
迷った末、言われた通りに椅子へと腰かけた。
「それで、おと」
「ごめんね、あっきー」
「え?」
一昨日はすいませんでした。
そんな謝罪の言葉を、再び遮る。
『どうして?』
何度も遮られることもだけれどー…
それよりもだ。謝るべきなのは自分の方だ。安積は純粋に手を差しのべてくれたのに、その手を裏切り酷いことをしたのは自分なのだから。
「貴方が謝ることなんて何もないじゃないですか。謝るのは」
「ちょっとね、テンパっちゃったんだよね」
喋らせないとでも言うように次々と言葉を遮られ、伝えたい思いは言葉にならずに後回しにされていく。
「ほら、急だったし」
「すいません…」
勿論その事だって謝りたい事なのだけど、一番に謝りたいのはそこではない。けれどその話しはして欲しくないと言っているような安積の態度に言葉が続かず、小さな掛け声と共に上体を起こす安積に咄嗟に手が出そうになるが、それは成されることなく下に落ちる。
一昨日の怯えたような顔を、逃げるように自分の手から逃げ出したその姿を思い出したから。
そんな班乃に気が付く事なく、股の上で組んだ手に視線を落としながら呟くような声量で口を開く。
「あっきーはさぁ…」
「はい」
「俺の事が好きなの?」
「……え?」
思いもよらない問いに言葉が出ない。
さっきから、全然上手く話すことが出来ない。
罵声や非難のような言葉をかけられる思っていたし、その覚悟もしていたから。
「自意識過剰だったらちょー恥ずかしいんだけどさ。でもあっきーが、好きでもない人に…その、そーゆー事するとは思えなくて」
あぁ、耳が痛い。胸も痛い。自業自得だけれど、その信頼が辛い。自分は、真逆の事をしてきたからー…
「…この間は酷い態度とっちゃったなって。そのせいで、あっきーも俺達と居づらくなっちゃったんだろうし。本当ごめん」
安積が自分に謝罪している意味が分からない。なにも悪いことなんてしてないのに。
市ノ瀬には避けていたわけではないと言ってしまったけれど、避けてたのは事実だ。
罪悪感で顔が見れなくて、申し訳なくて、距離を置いたほうが良いと思って。今までのような距離感で居たら、なにをしてしまうか分からなくて。また酷いことをしてしまうかもしれない。
傷つけたくないのは…自分だって同じだ。
でも、押さえられない。押さえられそうもなくてー…
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