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- 22章 -
- 見えない -
しおりを挟む「じゃぁ次。明は安積が好きなのか?」
「…えぇ。勿論好きですよ。とても大切な親友です」
「大切な親友、ねぇ…」
「…なんです?さっきから」
珍しく少し怒気の含んだその言葉は、もはや肯定したと捉えて間違いないだろう。
好きならなんで?
大切ならなんで??
いや、もうなんでなんて関係ないか。どうせ聞いたところで言うわけないし。
あくまで親友としてと言い張るなら、それでも良い。
ならー
「俺は、安積が好きだ」
「……え?」
「親友としてじゃない。意味、分かるだろ?」
「………」
「だから、安積を傷つけるなら許さない。この先どうなるかなんてまだ分からないけど、俺と安積の関係が変わったとしても “ いつも通り ” よろしく頼むわ。出きるだろ?大切なら親友の為なら」
「………」
「いくぞ」
結局なにも聞き出すことは出来なかったけれど言うだけは言った。もう話すことはない。それよりも安積が心配だ。班乃と一緒に行きたいとは思わないけれど安積を心配する気持ちはきっと班乃も同じはずで…
それに安積が班乃と顔を合わすことを嬉しいと思うかどうかは分からないけれど、もし避けられたと感じたことで落ち込んでいるのなら連れていかないわけにはいかない。
うつむき黙り込んだ班乃の肩をすれ違いざまに小突くと、後ろからゆっくりついてくる足音を背に教室を出た。
特に会話を交わすでもなく保健室に到着すると、外出中の札がかかっているが鍵はかかってない。静かにドアを開けると電気はついてはいないが奥のベッドカーテンが閉まっており、万一の人違いに備えそっと隙間から覗くと安積が小さな寝息を立てていた。
起こさないように中に入りそっとその頬に触れるとこめかみ辺りの髪が微かに濡れており、指先に触れた冷たさに、安積を泣かせてばかりの自分の後ろで佇んでいる班乃への怒りが次から次へと沸き上がってくる。
濡れた髪を梳かすように指を滑り込ませると、ゆっくりと目を開けた安積と目が合った。
「あれ……睦月?どーした?」
「どーしたじゃねぇよ。……また発作か?」
昨日、自宅に帰ってから喘息に関して少し調べてみた。まだまだ詳しくはないけれど、ストレスから発作が起こることもあるらしい。だとすれば一昨日のは班乃とのなにかが原因だろうし、もし今も発作を起こしていたのだとすれば今回も班乃との事だろう。
“また” と付けることで、一昨日班乃が原因でそれほどまでに苦しんだと言うことを。安積の事を知っているのはお前だけではないと言う牽制の意も込めて問いかけた。
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