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- 22章 -
- 見えない -
しおりを挟む「どこ、行くんだよ」
「どこって…保健室ですけど」
2限目が終わり、教科担任と2、3言葉をかわし教室を出ていこうとした班乃を市ノ瀬が呼び止めた。
トイレに行くと言ったまま戻らず、鞄もあることから安積が保健室に居るだろうことは容易に想像できる。
だからこそだ。
「なんで?」
「なんでって、心配じゃないんですか?」
「心配に決まってるだろ?だから、今こうしてるんだけど」
「………」
ただならぬ2人の様子に、教室内に微かな静寂が流れる。
「とりあえず、教室出ませんか?」
「…………」
確かに教室内で出きる話ではない。
困ったように笑い踵を返して教室を出ていった班乃の後についていくように教室を出た。
「安積のとこに行く前に話し、したいんだけど」
「……分かりました。でしたら…あそこで良いですか?」
手近にあった使われていない教室を指差す班乃に頷き、揃って教室へと入りドアを閉めた。
「それで、話ってなんです?」
聞きたいことはたくさんある。
でも何から聞こう?
安積の元に向かおうとするのを止めなくては、と慌てて呼び止めてしまったので考えが纏まってないままだ。
でもチャンスでもある。
ここでちゃんと話をしないと。
『…もう、まどろっこしいことはなしだ』
考えたところで満足いくように話せるとは思えないし、遠回しな言い方をしてグダグダするのも嫌いだ。
けれど怒りに任せてこの機会を無駄にするようなことだけはしないようにしないければと、怒りを押さえ込むように静かに両手を握った。
「なんで安積を避けてんだよ?」
「避ける?なんのことです?」
「自主制作の話し、なにも言ってなかったよな?するにしてもいつもなら安積に声かけるだろ?」
「あぁ……すいません、そう言うつもりではなかったんですけど。そう思わせてしまったのなら謝らないといけませんね」
『まぁ、こうなるよな。認めるわけないわ。分かってた』
分かっていたとしても腹立たしさは拭えないが、それでも聞きたいことはこれだけではないしと一先ずこの話題は置いておく事にする。
「昨日安積となにがあった?」
「別に、なにもありませんけど」
「そう。言いたくないって事か」
「どうして、そうなるんです?」
昨日の安積を見て、なにもないと言われて “ はいそうですか ” と言えるとでも?と思ったが、問い詰めた所で言わないことは分かってる。
ならば、と次の質問へと移った。
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