Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
513 / 1,055
- 22章 -

- 哀 -

しおりを挟む


まったく……

面倒くさげな表情を隠すことなく全面に醸し出しながらジャケットとワイシャツを脱ぐと、放り出す前に差し出された安積の手にそれを渡し几帳面にハンガーにかける姿を横目に布団に潜り込む。

『安積の匂い……』

当たり前か。

なんか、なんだか熟睡出来そうだ。

目を閉じるとズッシリとした重みが体を襲い、自覚していたよりも疲れていたのだと改めて感じさせた。疲労をため息と共に吐き出し吸い込んだ空気から感じる香りに不覚にも自宅より休めそうだと思っていると、目蓋の裏で電気が消されるのを感じる。

そしてー


「……どこ行くんだよ?」

「えっ?」


そのまま寝室を出ていこうとする安積の気配に声をかけると、寝室のドアから半歩出た状態で振り返り、悩んでいるかのように寝室とリビングとに視線を行き来させる。


「いや、あっちで寝ようかなって…布団出すにも煩くするし、2回も寝るの邪魔したし」


『自覚あったのかよ……』

自分に配慮しての発言なのは分かる。その気持ちを嬉しく思わないでもないが、それと同時に苛立ちも感じる。邪魔されたと言うのも事実だけれど、この苛立は決して邪魔されたからではない。


「………ざけんなよ」

「Σ えっ!?なんで怒られてんの俺っ!?」

「ソファーで寝てて良いなら起こすんじゃねぇよ」

「そっ、それは…だって、リビングが…冷えてたから」

「自分は良いって?そういう自己犠牲うざ」

「うざって…そんな言い方っ」

「あーもう、うるせぇな。良いから早く来いよ」

「………は?」

「狭いのくらいは我慢してやる。だからベッドに」

「いやいやいやっ!? おまっ、はぁ?なに言ってっ…」


ため息と共に目を閉じ片手で毛布を持ち上げると安積が戸惑いの声をあげる。今のタイミングでのこの提案に戸惑うのは無理ないが、言われなくともなにかする気なんて更々ないしするほど馬鹿じゃない。


「なに意識してんだあほ。乙女かお前は。変な想像してんじゃねぇよ」

「おとっ…!べっ、別にそんなんしてねぇしっ!お前になにが分か」

「分かる分けねぇだろ。なにも言わねぇんだから」

「…………」

「ま、どうでも良いけど。とにかくさっさと来いよ腕つる寒い。とっとと寝かせろ、疲れてんだよ2度も邪魔しやがって。そのくせまだグダグダ言って邪魔するのかよ良い性格だな」

「っ、いっ、行けば良いんだろ行けばっ!!」


あえて畳み掛け挑発するように言うと、案の定苛立つのが空気で伝わってくる。

でも、それで良い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...