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- 20章 -
-文化祭っ!!-
しおりを挟む『…それよりも今は月影さんのことだな』
話を聞く限りだと、今日用意している中からならダリアか桔梗、竜胆あたりが好きそうな気がする。落ち着いた色合いであって、あまりがちゃがちゃしていないような……贈り物なら花言葉も考えると桔梗か??
「…本当はさぁ、可愛らしい花が好きなんだよね」
「え?」
何故だか少し悲しそうな顔をして呟いた月影は、鈴橋が予想していたものとはジャンルの違う薄ピンク色の花を咲かせたペンタスの鉢を指でなぞった。
「こういう、小さくて、可愛らしいピンク系統の花が大好き。だけど、自分には似合わないって諦めちゃう。花だけじゃなくて、持ち歩く小物だったり私服だったり、身の回りのもの全部。似合わないなんてそんなこと全然ないのに、俺からすれば、女の子らしい所も可愛いらしい所もいっぱいあるんだけど。勿体よね」
「…そう、ですね」
『そうか…周囲に与えるイメージとその人の自身の好みが一緒だとは限らないもんな』
なぜそんな当たり前の事にきがつかなかったのだろうか。あんなに女性役の似合う安積だって、いつも文句言いながら演じているのが良い例だ。
『……ちょっと違うかもしれないけど』
「自分なんて、とか、周りの目や評価を気にしすぎるのは止めてさ、“冒険”してみるのも大事なんだよ。なにもしなければなにも起こらないし嫌な思いもしないで生活出来るかもしれないけど、“冒険”しないと、新しい発見もその先にある“楽しさ”も、“喜び”だってなにも見つけられない。好きを我慢しても良いことなんてないのに。勿体ないよね」
なんだか言葉の所々に、今の鈴橋にとって刺さるものがあった。まるでこれから自分がやろうとしていることを知っているかのようで……
まぁ、気のせいだろうけど。
「……そうですね。その通りです。自分を変える為に悩むのはしょうがないですが、いつまでも悩み続けるのは時間の無駄ですよね。じゃぁ、今回は……そうですね。ペンタスか…少し大きめですけど、この薄ピンクのダリアなんて良いのでは」
「ところがねっ!」
「はい?」
「俺も奥さんも出張やら泊まり込み作業やらで世話出来ない期間がね、ちょいちょいあるんだよね!」
「………」
「花はね、好きだと思う。花屋の前とか通ると何気なく見てるから。だからと言って切花はあまり好きじゃないみたいで…世話できないで枯らすのは嫌だからって結局諦めちゃうんだよねぇー…」
「じゃぁ、そもそも鉢植え駄目じゃないですか」
「そうなのよー」
『じゃぁ、なんで鉢植え物色してたんだこの人……時間の無駄じゃないか』
でも、そう言うことならちょうど良いものがある。そう言う人の為に作ったものが。自身の目論見が見事当たった高揚感に微かに口角を上げ、それならとハーバリウムを指差した。
「これはどうですか?これなら置く場所さえ気をつければ、なにもしなくても最長で1年くらいは持ちますよ」
「えっ!?これ売り物だったの!?君達が作ったのこれっ??えっ、すごっ!すごぉ!完成度高くててっきり装飾かと思った!」
えー!きれー!としきりに呟きながら笑顔で1つ1つ手に取っては角度を変え光にかざし入念に観察しつつ選んでいる姿からは、本当に彼女の事が好きなんだなと伝わってくる。
それと同時に、自分が植野にあげる花を選んでいる時も今の月影に負けないような表情をしているんだろうなと、否定することなく、今は素直に認めることが出きる。
『そう。その通りだ。冒険は大事だ。それでなにが、起こるとしても…』
自分の決意を後押しされたような気がして、お礼を言えない代わりに感謝を込めて少しだけ豪華なラッピングを施したハーバリウムを手渡した。
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