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- 20章 -
-文化祭っ!!-
しおりを挟む「後15分くらいか」
側にある時計に視線だけ向け小さく呟いたのは、パラソルの下で相も変わらず読書に勤しんでいた鈴橋だ。
当初の予測通り買って帰る人は殆どおらず、目の前に並ぶ品物に代わり映えは殆んどない。早い時間が担当で良かったと思いつつそろそろ交代の準備をと読んでいた本を閉じ顔をあげると、1人向かってくる月影の姿をとらえた。
「こんにちは、鈴橋くん!」
「こんにちは。お1人、ですか?」
先程目の前を通りすぎた時は3人で行動を共にしていたはずだ。レシーブチャレンジがどうのと話ながら早足で通りすぎた2人を月影が少し遅れて追うような形ではあったが、通りすがりに“こんにちは!また後でね!”っと手を上げ声をかけてくれていたのだった。
「そう!皆もう植野君のクラスに集まってるよ!ちなみにてっちゃんはタコ焼やいてるw」
「…そう、ですか」
経緯は謎だが、OB組の行動が理解を越えるのはいつもの事だ。あえて聞く必要もないだろうと話を打ちきった。
「それで、なにか用ですか?」
「もちろん花を買いにきたに決まってるじゃない!」
…それもそうか。
個人的に用があるとも思えないし、あまりにも人が来なさすぎた為自分が何の為にここに居たのか忘れかけてしまっていた。ズラリと並ぶ売り物の前にしゃがみこんだ月影は、並ぶネームプレートに熱心に何度も目を行き来させている。
「ご自分用ですか?それとも贈り物ですか?それとも、あまり気に入るのありませんでした?」
そんな月影を暫く見ていたのだが、熱心に見ているわりにはあまり浮かない顔をしていた。気に入ったのがないのならしょうがないが、なにか理由があって決めかねているなら、なにか力になれるかもしれない。
「贈り物っ!奥さんにね、あげようと思って。ちょっと恥ずかしいから1人で来たんだよ」
この人から奥さんなんて言葉が出るのが違和感でしかないのだが……けれどそう言う月影の顔には幸せそうな色が浮かんでいて、そんな幸せに自分の育てた花が少しでも彩りを加える事ができるならそんな嬉しいことはない。
「…奥さんはどんな方なんですか?」
「どんな?」
その人がどんな人なのか。イメージを知れば少しくらいは助言が出きるかもしれない。質問の意図を掴めなかったようで一瞬不思議そうな顔をした月影だったが、直ぐに理解したようでぱっと明るい笑顔を浮かべた。
「そうだね、チョー美人だよ!サバサバしててキリッとしたクールビューティーな感じかなぁ?で、すっごく愛情深い人っ!隙のないパリッとした着こなしが多くて、高身長で手足もスラッとしてて凄くスタイルが良くて、プロポーションも最高なのっ!本当俺には勿体ない人だよー」
「…成る程」
『…なんだろう。この惚気られた感』
なげかけた質問に答えてくれただけなのに…この閉まりのない顔のせいだろうか?ただの惚気話に聞こえてしまう。
『いや、失礼か。聞いたのは俺だし…』
それに素直に好意を口にすることに関しては見習うべき所である。特に、今は。
それはこの後自身がしようとしている事にとても大事な要素でありもっとも苦手としている事でもあるが、そこは頑張らないといけない所だ。
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