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- 20章 -
-文化祭っ!!-
しおりを挟む「俺って実は結構器用だったりする!?」
「なに言ってるんです?前から器用だったでしょう」
「えっ!?まじ!?そんなふうに思っててくれたのっ!?嬉しっ!!」
置いてけぼりにされ班乃と合流した安積は、とあるクラス主催の工作体験でキーホルダーを作成していた。
今まで作ろうと思った事などなく作り方もまったくと言って良い程知らなかったのだけれど、やってみると意外と面白いもので思わず熱中してしまった。
普段出来ない体験が出来るのも文化祭の醍醐味というものだろう。
「にしてもあっきーさ、なんか可愛らしいの作ってたね?誰かにあげるの??」
「えぇ、まぁ」
そう言われ目の高さにぶら下げたキーホルダーには、花と月をあしらった夜を思わせるものと、花と太陽で昼を思わせる2つのものがあった。
「作るのは存外楽しかったですけど僕には不要なものなので。姉2人にでも差し上げようかと」
「えっ!?」
「ん?」
「あっ、いや、優しいね明は」
「そんなことないと思いますけど」
「そんなことあるよっ!でも…そっかそっか。そうだよなぁー…」
「どうかしました?」
「いやっ、まぁ…あっきーがキーホルダー持ってるの見たことないし、いらなかったよなぁーって。誘ってごめん」
申し訳なさそうに笑う安積の手のひらには、ほぼ同じデザインで色ちがいのキーホルダーが3つ乗っかっていた。そのキーホルダーにすっと視線を落とすとギュッと握りしめる。
「えーと、なんだ。せっかくだし、作るならお揃いにして明と睦月にあげようかと思ったんだけど…迷惑だったy「いただきますありがとう」
「Σ えっ、う、うん、どういたしまして?」
食いぎみに言い放ちズイッと差し出した班乃の手に、戸惑いを隠せないままひとつのキーホルダーを乗っけた。
「これは、安積の思う僕のイメージですか?」
「うん、あっきーは青、睦月は紫、俺は単純に好きな色w演劇部でお揃いのを持つのも良いなぁーって思ったんだけど…」
そこで言葉を切った安積は、本当に不要なものではなかっただろうかと気にしているのがありありと見てとれる表情をしていた。
確かに普段キーホルダーなど使わないし、どこかで売っていても目に止めることすらしない代物だ。
けれどー
「安積が僕の為にと作ってくれた物が不要なんてこと絶対にあり得ませんよ。とても嬉しいです。キーホルダー作りだって、安積が誘ってくれなければ一生経験する事もなかったと思います。とても良い経験になりました。ありがとう、安積」
大切そうにキーホルダーを握りしめた手を、まるでキスをするかのように口元へ当て微笑む顔はとても幸せそうだ。
喜んでくれたのはもちろん嬉しいが、そんなふうにされては急激に照れくささも襲ってくるというもので…
「あっ、あっきーって絶対天然たらしだっ!! でも喜んで貰えたなら作って良かったよ!!」
「たらし、ですか?」
「無自覚なのっ!?こわっ!!」
「…たらし込まれてくれます?」
「込まれてるよっ!あっきーって本当人喜ばせるの上手だよねっw」
「ありがとうございます。でもそれは安積もですよ。睦月打ってきっと喜んでくれるはずです」
「だと良いけど…あっ、そろそろ綾の所行ってごはん食べよ!!で、本番前に台本とか最終確認したいな!多分睦月も来てるだろうし!」
「そうですね、そろそろ向かいましょう」
“たらし”の意味のすれ違いは安積の心情を表しているかように思えあえて正すことはせず、寂しさと無念さを感じながら安積の思う“たらし”に会話を合わる。
そんな班乃の心情など知らず照れくささを隠す為わざとおちゃらけたように話をそらした安積は、キーホルダーを制服のポケットに突っ込み急ぎ植野のクラスへと足を向けたのだった。
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