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- 18章 -
- 疑惑 -
しおりを挟む「睦月っ!!」
「んーーっ!?」
漂ってくる美味しそうな匂いにいい加減耐え兼ねそうになっていた頃。呼ばれて振り返ると物凄いでなにかが顔面へと飛んできた。自画自賛したくなるほどの反射神経で見事キャッチするとそれはーー
「投げてよこした布巾は青だっ!!」
「お前は山犬かっ!!」
「はいはい、ご飯出来たのでテーブル片して拭いてくださいねー」
首をチョップし声を震わせ、某山犬の似ても似つかないモノマネをした安積に悪態をつきながらも漂う美味しそうな香りには勝てず大人しくテーブルをふき、食卓についたのは1時間前くらいの話だ。
「あー、久々に食い過ぎたわ」
「睦月の初お泊まりだったので、気合い入れて作りすぎましたね」
「動けねぇーー…」
大きなため息をつきながら限界まで詰まった胃袋を各々が楽な体制で休ませつつ、充実感を噛み締めていた。
「いやー… しかしお前もちゃんと成長するんだなぁ」
「…なんの話だ」
体が消化以外の動き拒否している為寝転がったまま視線だけ投げ掛けると、安積がニマニマと笑顔を見せていた。
『……なんだか殴りたくなる笑顔だな』
「いやほら、この前片付け食いの話したじゃん?今日は食べる前にあっきーに断り入れてたからさ。ちゃんと俺の言葉届いてたんだなって感動してしまってねっ!」
「…なんか腹立つなっ」
「なに言ってるんです安積。貴方がどう思ってたかは分かりませんけど、睦月は結構素直に聞き入れてくれますよ?」
「えぇー……?」
「誰に言われたとしても自分が納得したことに関しては」
「…それ、誉められてる気があまりしねぇな…それに安積に言われた事って事がかなり癪だわ」
「なんでよ差別っ!」
安積の文句を聞き流しつつ満腹感からくる眠気に目を閉じる。なんだかんだこういうの身のない会話も楽しいものだと、以前の自分なら思いもしないだろう事を感じていた。
それを与えてくれたこの2人には感謝している。
絶対に口には出さないけど。
しかしー
「……眠いな」
「…どーかん」
「今日はお風呂入って寝てしまいましょうか。結構捗りましたし、僕も少し疲れました」
「あー…風呂どうする?2人共先行く?」
「僕は後で。家人より先に頂くのは申し訳ないので」
「そんなん気にしないで良いのにぃ。睦月は?」
「俺は風呂の前に筋トレしたいから後で」
「りょ。じゃぁ先入ってくるわぁー」
今にも閉じてしまいそうな目を擦りながらてろてろと風呂場へ向かう安積を見送ると、ひとまず風呂の準備を済ませた2人は各々ルーティーンへと移る。
「食事直後に大丈夫です?」
「ぁー…。がっつり食っちまったしなぁ。今日は軽めにしとくか」
「無理、しないようにしてくださいね?」
「おぅ。さんきゅー」
食後によくやるなぁと思いつつも、習慣化しているとやらないことが罪悪感になることもある。本人が満足するのならと筋トレを始めたのを横目に台本を広げた班乃は、今日話していた大事な所を忘れない内にと書き込み作業に入った。
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