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- 17章 -
- そろそろ本腰入れましょうか -
しおりを挟む「あのですね、綾雪。学君が熱を出したのも、その時に貴方が部活中だったのも、そのせいで頼ってもらえなかったのも、睦月が部活を休んだのも、紗千ちゃんが睦月とたまたま会ったのも、その流れで看病をする事になったのも、全部、せーんぶ、ただの偶然なんですよ?」
「…ぅん」
「誰も悪くないし、誰を責めることも出来ないでしょ。貴方にとってはただ運が悪かっただけの話です。学君の力になりたかったのは分かりますけど、そんな独占欲丸出しで行くのはあまり良くないかと」
「うん、全く持ってその通りですよねー…あー恰好悪い…」
「それだけ学君が好きって事なんでしょうけど」
「うん、ちょー好き、大好き」
「…まぁ、応援はしますけどね」
度々相談を受ける立場として、勿論友としても2人には上手く行って欲しいという。そんな思いからの忠告ではあるのだけれど。
「でも難しい話、今の状態で満足してしまうのも少し危ない気がしますよね…」
「ん? どゆ事?」
少しの羨ましさからの忠告と言う名の八つ当たりを心に秘めて、班乃は真面目な顔をして口を開いた。
「貴方達、まだ正式に付き合って居る訳ではないのですよね?」
「う、うん、まぁ、そうだけど…」
「分かりますよ。学君が自分の気持ちに整理をつけてしっかりと自覚出来るようになるまで、焦らずゆっくりやっていくつもりなんですよね?」
「うん…キャパオーバーさせて上手くいかなくなったら元も子もないし…急かすのも可哀想だし」
「そうですか。まぁ、相手思いな優しい考えだとは思います。学君に自覚はないとしても第3者から見たら綾雪を恋愛対象として好いているのだとも分かりますし、焦らずともうまく行きそうな気もしちゃいますよね」
「しちゃう…?」
引っ掛かる物言いとあまりにも真面目で深刻そうな顔をした班乃に、嫌な予感が脳裏を包み思わず生唾を飲み込んだ。
「お互い好き合っているという事実に安心しきって正式に付き合うのを後回しにし、この状況に甘んじ続けてしまっている内に、いつの間にか…」
「……………」
「好きだなんて言ってない。
付き合ってる訳じゃないだろ。
都合よく記憶の改竄するな。
彼氏面するな、鬱陶しい。
なんて、言われてしまう未来もあるかも知れせんよ」
「…………………」
「…………………………」
鈴橋に寄せた言葉使いで並べ立てる班乃の言葉に、不覚にも鈴橋の口から発せられる情景が浮かび一気に不安が押し寄せる。
確かによくよく考えれば、ずっと好きで居てほしいという様な事は言われたが、鈴橋自身が自分の気持ちを考えるといった様な事は言われていない。
もしかしたらずっとこのまま、更には今班乃が言ったような事が起こる未来だって否定は出来ないのではと、ここに来て初めて思い当たる。
急速に募る不安に押し潰されそうになるのをなんとか堪え、意識的に笑顔を作り声のトーンを上げた。
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