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- 17章 -
- そろそろ本腰入れましょうか -
しおりを挟む兄と同じ服を着ていただけで全信頼を寄せ個人情報を渡すなんて危ない事この上ない。今回はたまたま…一応友達のようなものだったから良かったものの、同じ学園の人間が全員善良な人間とは限らないし、紗千本人に危害はなくとも鈴橋家の情報を使いなんらかの悪巧みがされる事だってあるかもしれない。
それを考えれば…
「まぁ、あれだな」
「ん?」
「鈴橋、俺があんたの良い人で良かったな」
「…は?」
「睦月、そのネタがっくんには通じないと思う」
「…ですよねー」
「良く分からないけど…市ノ瀬が悪人じゃなくて良かったとは思う」
「そりゃどうも…」
分からないだろうと思いながら振ったネタであれど、微かに沸きあがる悲しみになんとなく見上げた空は気持ち良い程の快晴で、その眩しさに目を細めた。
「なんか睦月がたそがれてる」
「絵にな…りそうでならないですね」
「…風邪移したか?悪い」
「ちげぇよ。…ちょっと、あれだ。提出しなきゃなプリントがあるから、先戻るわ」
「提出しなきゃな…って。 Σ あっ!それ俺もまだなやつだ!!睦月ナイスっ!」
「うるせぇよ」
「褒めたのになんでっ!?」
さくさくと屋上を後にする市ノ瀬を追いかけながら、“また後でっ!!”と元気よく手を上げた安積が屋上を後にするのを見送ると、無言のままそれを追うように鈴橋も屋上を後にした。
今日は雲1つない快晴だ。文化祭で売り出す苗も育てていると言っていたし花壇の世話をしに行ったのだろう。
3人が次々と姿を消し、必然的に屋上には班乃と植野が残された。
晴れ渡る真っ青な空の下。隣に座る植野の表情は真反対に曇りに曇っていた。
『…真隣で辛気臭い顔されるのもしんどいですね』
目視には気持ちの良い空でも秋近しな気温に汗ばむ体は遠慮なく不快指数を上げていき、植野の醸し出す空気がそれに拍車をかけていく。
熱を逃がす様に息を吐き出しげんなりと植野へ視線を投げると、3人が消えた扉をただただ見つめ、両手には包み込むように飲みかけの飲み物を握っている。
様々な果物が描かれた、フルーツ牛乳が。
「…綾雪、いい加減にしないとフルーツ牛乳が可哀想なフルーツ牛乳になりますよ」
「…えっ?ぁっ、あぁっ!!俺のフルーツ牛乳っ!!」
班乃の忠告に両手で握りしめているものを思い出し慌てて1口含むが時既に遅し。体温と夏の気温がダルパンチでフルーツ牛乳を完全なまでに悲しいフルーツ牛乳に変えてしまっていた。
「まったく…」
落胆の声と共に悲しげな眼をしてフルーツ牛乳を地面に置いた植野に、班乃も呆れたように何度目かのため息をつく。
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