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- 17章 -
- 文化祭まで後1ヶ月弱 -
しおりを挟む「がっくーん」
「なんだよ」
「さっきせーちゃんめっさ落ち込んでたよー」
「だから?」
HRも終わり帰りの準備を進める鈴橋のもとへと立ち寄った植野は、目の前にしゃがみ顔をのぞき込んだ。
『今日も可愛いなぁー…』
と思いながらも、心配なのは安積のことだ。
授業開始直前に駆け込んできた為時間がなかったと言うこともあるが、それにしても保育園の手伝いを申し出た安積に対する断りの言葉は交渉の余地もないバッサリとしたものだった。
元々がはっきりとした物言いなうえ表情も乏しいので、相手に与える厳しさは本人が思っている以上なものには間違いない。
「いやさ、もうちょっと優しく断ってあげてもっても良いんじゃないかなぁって」
「やんわり断ってあいつが納得するか?」
「それは、まぁ…そうかもだけど」
「それに…」
「それに?」
「市ノ瀬まで着いてきそうで嫌だ。あいつだけは絶対嫌だ」
「あー…それは確かに。がっくんむっちゃん苦手だしねぇ」
初対面から印象が悪く日々なにかと失礼な物言いが多い市ノ瀬に対し、鈴橋からの印象は現在進行形でマイナスに全力疾走している。
それだけじゃない。市ノ瀬が保育園に来たと考えたら不安は有り余るくらいあった。流石に子供相手に喧嘩はしないだろうが安全を見守りお世話をする姿は想像できない。
『スマホをいじりながら完全放置してそうだし、手伝いレベルだとしても任せられるわけねぇだろ』
人様の大切な子供を預かっている責任は大きいのだから、手伝いにだって人を選ばなくてはならないのは当然の事である。
『…でもまぁ、確かに安積には少し悪かった、かもな』
心配の根元は安積ではなく、むしろ安積に至っては子供からもう来ないのと聞かれることもあった程だ。彼単体なら考えないこともなかった…
『…いや、駄目だ。おままごととはいえアイツは紗千を嫁にした男だ。紗千も気に入ってたみたいだし、出来ればもう会わせたくない』
うっかり植野に丸め込まれる所だったが、断った判断は間違いではなかったはずだ。
安積が落ち込んだ様子だったのは少しだけ、ほんの少しだけ気にはなるが、きっと放っておいても勝手に元気になるだろうし駄目なら班乃がどうにかしてくれるだろう。
気疲れのせいか少し頭も痛くなってきた所で考えるのを止め、まだ気がかりそうな植野へと軽く手を上げると部活へと向かった。
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