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- 16章 -
- もれなく知れます -
しおりを挟む「どうせ、皆して俺を見て楽しんでたんだろっ!」
悔しそうな震えるで苦言申し上げる市ノ瀬に
“とんだ被害妄想だ”
と、誰しもが思っただろう。
だがあえてそれを言葉にする事はさすがに…
「とんだ被害も「あーーー!!」」
素直と言うべきか流石と言うべきか、歯に衣を着せない鈴橋がズバッと言いかけた言葉を植野がなんとか遮る。
一瞬眉間に皺を寄せた鈴橋だったが面倒事を嫌う性格も手伝ってか直ぐ様スルーすることに決めたようで、窓の外へと視線を移したのを確認すると植野はほっと胸を撫で下ろした。
「ごめんね、むっちゃん。でも楽しんでた訳じゃなくてさ。月影さんから言わないでって言われてたし…」
「そもそも月影さんをそんなふうに見てたって事事態俺も植野も知らなかったし。八つ当たりすんな」
『それ言っちゃ駄目だよがっくんっ!!』
鈴橋の言う通りだ。興味を持っていた事や女性と勘違いしていたのは知っていた。しかし、市ノ瀬が月影に対し恋愛感情を抱いていた事は初耳の事実だった。
既に知っている体で話している市ノ瀬にその事実を伝えるのは酷な話というもので、あえて突っ込まないで居たのだがこうなってしまってはしょうがない。
「……今、なんて?」
「まぁ…そうだね。撫子の君に興味持ってた事は知ってたけど…でもほら、あの風貌じゃ無理ないと思うしっ!気にすることないよっ!」
「……………」
慌てた様子でフォローを入れる植野に思考が止まり、遅れて追い付いた理解に体温が急速に上がっていく。
既に安積か班乃から聞いていると思っていたが、それは早合点だったと言うことで…それなら今、自分はかなり墓穴を掘った事になるんじゃないだろうか?
あまりの失態に言葉をなくした市ノ瀬にフォローの言葉すらもなくなり、一同を冷えた空気が包み込んだ。
「まぁ、もう良いじゃないですか。過ぎたことは。学生で月影さんの事を知っているのは本当に僕らだけですし、これ以上なにか起きることはないですから安心してください」
「……そう。分かった」
これ以上のダメージは本人的にも自分達的にも辛いものがある。疑念や不安が残らないように市ノ瀬へと告げるとどこか安心したような表情を浮かべた。
市ノ瀬にしてもこれ以上話を掘り返して更なる墓穴を掘るのは避けたいところだしと大人しく頷くだけに止めたが…
「まぁ、見てて滑稽っちゃー滑稽だったけど」
「ああ゛!?」
「せーちゃんっ……!!」
ようやく落ち着きを見せかけたのに
なぜどうして荒立てるような事を言うのか…
普段なら人一倍空気を読むのに、どうも市ノ瀬相手になると突っ掛かりたくなるようだ。
鈴橋は鈴橋で静かに笑いを堪えているし…
植野が助けを求めるように班乃へと視線を投げると爽やかな笑顔だけが返され、もう出来ることはないとでも言うように食事へと戻っていった。
班乃までもこうなってしまっては、自分に出来ることももうないだろう。
“賑やかなやり取り”を収めることは諦め同じように食事へと戻り、飽きたように帰宅を促した鈴橋の声で一同ようやく解散となったのだった。
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