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- 15章 -
-謝罪と始まり-
しおりを挟む「遅くまでつき合わせちゃってごめんね」
「いえいえ、僕こそありがとうございました」
「今日はどうする?帰る?それとも泊まってく?」
「そうですね。…先週泊まった時にした洗濯物って、僕持って帰りましたっけ?」
「うぅん。乾かして置いてあるから、着替えは大丈夫だよ」
「そうですか。 では、ご迷惑でなければ泊まって行って良いですか?」
「…うんっ、 大丈夫だよ!じゃぁ、風呂沸かしてくるね」
「ありがとうございます」
リビングに班乃を残しそそくさと風呂場に向かった安積は、湯船にお湯を溜めながらその水面をぼんやりと眺めていた。
泊まるかと言い出したのは自分なのに、班乃が泊まらせてくれと言った言葉に直ぐにかえせなかった。
今までだって班乃が御泊りする事は何回もあったはず。
なのに、なんか違う。
原因は分ってる。
「優柔不断すぎてイライラする」
少しずつ水かさが増していく湯船に写る自分の顔は、自分の嫌いな暗い顔で…。
気のせいだったって思う気持ちと反比例して、あの時のキスの意味を、未だ気にしてふらふらしている自分の気持ちが嫌だ。
勝手に気まずさを感じて暗くなるなんて、最悪すぎる。
気のせいだって思う気持ちと、気のせいでなく意味があったと思ってしまう思い。
気のせいではない場合の、班乃や自分の気持ち。
それでも今まで通りに過ごそうと決めた事。
「あぁ、もうっ!」
水面に映った自分の顔を掻き消すように手を叩きつければ、反動で上がった水しぶきを思いっきりかぶってしまった。
「……イライラするって良くないな」
ぽたぽたと髪から垂れる水をそのままにリビングへと戻ると、その様子に班乃は驚いたように目を丸くする。
「…えっと、水遊びでもしてきたんですか?」
「そーいうわけじゃないんだけどね…ごめんだけど先お風呂入って良い?」
「えぇ、もちろん。安積の家ですしね」
「ありがとう」
自室に着替えを取りに入り、そのまま脱衣所に向かった。
きっとこのままじゃ自分がもたない。
お風呂から出たら、きちんと話をしよう。
そんな事を思いながら。
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