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- 15章 -
- 違うからこそ -
しおりを挟む「そうそう、睦月の事なのですけど…」
「睦月?…ぁっ、あぁ、市ノ瀬か…」
そんな中、唐突に出てきた名前に一気に頭の中が埋め尽くされる。今頭を悩ます全ての事は彼が転校してきた事が発端であり、次々と増える悩み事は解決するどころか糸口すら見えないままだ。
『っていうか、いつの間に名前呼び?』
偶然を装いあまり近づかない様にしてたのでまったく気がつかなかった。いつの間にそんな仲になったのだろうか…
それも気になる所だが、それ以上に…
また何かやらかしたのだろうか、今日の部活で何か問題でも起こしたのだろうかと心配になる。不安が込み上げ班乃を見るが、その表情からは今一掴みきれない。
「…市ノ瀬がどうかしたの?」
「そんな不安そうにしなくて大丈夫ですよ。確かに少し行動が行き過ぎてしまったり、言動がすぎてしまったりと色々とありますけど…貴方が思うほど悪い子ではないと思いますし」
「…わからないよ。そんなの」
思う程悪い子じゃないと言われても信じられる気はまったくしないし、行動がいきすぎるのも言動がすぎるのも“少し”とは思えない。
今まで誰かに嫌われる事も嫌う事も殆どない平和な日々であった故に、まさか自分がこんなにも誰かに腹を立てたり嫌われたりする日が来るなんて思ってもなかった。
それでも、思う程悪い子じゃないと
そうあって欲しいとは思う。
これ以上、問題を起こさないで欲しい。
これ以上、大切な人達を傷つけないで欲しい。
「まぁ、直ぐには難しいとは思いますけど。 …多分、もっと話すべきなんだと思います。貴方も、睦月も」
「そう…かなぁ」
「えぇ」
腑に落ちない。
無意識にそんな空気をかもし出していたようで、困ったように笑った班乃が安心させるかのように安積の肩を叩いた。
「僕も協力しますから。折角クラスも部活も同じなんですし、楽しく行きましょう?」
「うん…頑張ってみる」
「なにかあったら、遠慮しないで言ってくださいね?いつでも話、聞きますから」
「うん。ありがと」
「では、そろそろ電車が来る時間なので」
「あっ」
「はい?」
「…ゃ、なんでもない。気をつけて帰ってね」
「えぇ、貴方も。 それではまた明日」
お互い手を振り合いホームへ消えていく背中を見送ってから、安積も帰路へと歩き出した。
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