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- 15章 -
- 違うからこそ -
しおりを挟む「……ごめっ、ね…まだ見つからなくって」
長い沈黙の末、先に言葉を発したのは安積だった。途切れ震えるその声は、まるで今にも泣いてしまいそうなのを懸命に堪えているように聞こえる。
横に下げられていた腕が班乃の背中へとまわされるとしがみつくように強く上着を握り、顔を見られまいとでも言うように胸元に顔を埋めた。
「余けっ、な事だってのは…わかっ、分かってたんだけどさぁ…やっぱ大切なもんだし、明は外そうと思ってたなんて言ったけどー…あんなふうに失くされて良い物なんかじゃないって…思って」
「馬鹿ですね…貴方がこんなになってまでする事じゃないでしょう?もしかして、部活休んだのもこの為に?」
「…………」
「そうですか…こんなに冷えるまで、そんな長時間…風邪でもひいたらどうするんです」
「…そんなの、数日あれば治るからどうでもいい。体なんかよりー…心のほうがずっと痛いっ」
「安積…」
寒さのせいか、はたまた悔しさのせいか。腕に収まる体が小刻みに震え、泣くまいとしているかのように時折深い呼吸を繰り返す。
認めたくないけれど
心に灯るこの感情は確かに知っている。
ー…愛おしい。
それは紛れもなく、否定しようもなく胸に沸き上がる。
こんなにも大切に思ってくれる友達が出来るなんて思いもしなかった。
【大切な人を亡くす痛み】を覚え、もう2度とそんな思いはしたくないと誰に対しても一線引く付き合いを心がけていた。
筈だった。
それなのに……
『…安積は、もうー』
いつの間にか【大切な人】になってしまっていた。
【大切な人】を作らないという自分の決意をすり抜けて、すり抜けられた事さえも気づけないまま。
自然と自分の中に溶け込んでしまっていた…
「…余計な事だなんて思うわけないじゃないですか。ありがとうございます…その気持ちだけで、凄く嬉しいです」
「うん…ごめん。 ごめんねー」
鼻をすすり尚も謝り続ける安積の頭に手をずらし、もう一度力強く抱きしめてからその体を離した。
泣き顔を見られまいとするかように絶対に視線を合わせないその姿がなんだか微笑ましく、口角が自然と持ち上がる。
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