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- 13章 -
- 事実は小説よりも奇なり -
しおりを挟む「……なんか急に笑いだしたんだけど。怖」
「本当せーちゃんって面白いよね」
垂れた耳が見えそうな程の申し訳なさそうな空気はどこへやら。口から小さくもれでる笑い声に、未確認生物に遭遇したかのように鈴橋が身を引いた。
「なにか良いことでもあったんですか?」
「や、ちょっと…いや、だいぶ恥ずかしいけど、嬉しいなぁって、思って!聖がさ、そんな事言ってくれてたなんて」
嬉々とした声で喜びを表現し、バランスよく口角を上げ高潮させた頬は、その言葉通りの心情を素直に物語っていた。
「…やー、似てない兄弟だなって正直ぱっと見思ってたけど、撤回撤回。似てるわ、お前ら」
「似て…る?」
急な長谷川の発言にきょとんとする安積と、少し離れた席で秋山と楽しそうにワイングラスを合わせる月影へと自然と視線が集まる。
一同のその視線に気がついた月影は飲みかけたグラスを口から離し、“きょとん”と目を瞬かせたた。
「なぁに?」
「や、なんでもねぇよ」
「そぅ?」
なにか用かと聞いてはみたものの、今は一同の視線に込められた感情よりも酒酌み交わす方が大事らしい。首を傾げふんわりと笑ったあと、再び秋山との会話へと戻っていった。
「ささ、のんちゃん、一献交えましょっ!」
「一献っw」
「一献っ!!ww」
声を抑えつつもテンション高めにボトルを傾けた月影と、グラスに残っていたワインを飲み干すと嬉しそうに手酌を受けた秋山は再び楽しそうに談笑を始める。
そんな一連の様子を眺めー…
「確かに、似てるかもしれませんね」
「えっ!?今の一瞬でなにがあったの?」
「うーん、俺も何となく分る気がする」
「…そう、だな」
「え、なになにっ?どこが?」
1人わけ分らない顔をした安積を眺めて、同級生3人は長谷川と同じ意見を口々に発した。
「表情、豊かだよな」
「えっ、そう??」
「自分の感情に素直って言うか…特に笑った顔なんて雰囲気そっくり。心の底から嬉しそうに笑うよね」
「嬉しい時だけじゃなくて怒る時も全力で怒るし、悲しい時も全力で泣きますよね。月影さんがどうかは分かりませんが、本当愚直に素直ですよね。顔面」
「Σ 顔面っ!? それ誉められてるのっ!?馬鹿にされてるのっ!?」
「誉めてますよ。とても魅力的な良い所だと思います」
「えっ!? あり、がとっ…」
「愚直に素直ねぇ。確かにひーもそうだわ。滅多にないけど全力で泣くし、怒ると怖い。マジで怖い。まじ怖い」
「なんかい言うのよ、鉄兄ww」
「なんかいでも言うさ…」
「素直か…なんか子供みたいだな」
「子供っ!?」
「あぁ、成る程。しっくりきました。一緒に居て飽きないですよね」
「なんか全然嬉しくないんだけどっ!!」
「なに言ってんだ。子供は素直なのが一番だ」
「がっくん俺同い年っ!!」
「まぁまぁ、子供かどうかは置いといてw俺はそんな素直な聖ちゃんが大好きだよ!!」
「…あやぁっ!」
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