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- 13章 -
- 真実 -
しおりを挟む「やっぱがっくんは外見で頭のよさが滲みでるんだなぁ」
「…褒め言葉、でいいのかそれは?」
「もちろんっ!」
「じゃぁ、班乃君がこれ以上怒っちゃう前にちゃちゃっと言うね!撫子の君で居たのはね、それはもちろん、面白いからだよっ!!」
「………」
「…………」
「思った以上に暇人ですね」
「仕事に遊びに精一杯なのは良い事だと思うんだよねっ!最初はただなんとなく遊びに来ただけだったんだけど、たまたま俺を見た生徒が“謎の人が居る!”って言ってたのを聞いちゃってさ。これは面白くできそうだなって!」
「面白く出来そうって…」
「概ね大成功だよねっ!頑張った甲斐があったなぁ」
確かに、撫子の君の噂は入学してきた頃から今も変わらず囁かれ、興味津々で覗きに行く生徒もまだまだ存在する。月影の思惑は大成功と言っても良いだろう。
しかし、神秘のヴェールに包まれていた撫子の君がこんなマイペースで能天気な子供っぽい人物だと知れたら、いったいどれだけの人が落胆することだろうか…
「学校に遊びに来たって、もしかして月影さん、OB、とかですか?」
「えっ!良く分かったね!またもや大正解っ!本当、君は頭の回転速いなぁ!」
「…ありがとうございます」
「ついでにもう1つ、俺がここに来るのは一応仕事としてってのもあるんだ」
「「「仕事?」」」
学校に仕事で来るなんて、教師以外には食堂のおばちゃんくらいなもんだと思ってたけど…
不思議そうな視線を向ける一行に、笑顔度をUPさせた月影が大きくうなずいた。
「これあげるー」
そう言って取り出したのは1枚の紙切れ。大きさから言って名刺だろう。差し出された鈴橋は怪訝な顔をしながら受け取ると、そこに書いてある文字を目で追い、小さく読み上げた。
「Sunflowerデザイン事務所…代表取締役…って」
「デザイン事務所!?月影さんデザイナーなんですか?」
「そうそう。7割くらいは服飾で、後は結婚式会場のセッティングとか絵葉書とかポスターとか、色々やってるよー」
「マジで!?すっげー!!」
あまり聞くことのない職業に盛大に目を輝かせる植野の脇腹を、突如盛大な音と共に突如激痛が襲う。
「痛っ、ちょ…なに、がっくんっ!?」
「…お前、もうちょっとわきまえた方が良いぞ」
「わきまえって…」
「どしたのがっくん?急にそんな改まって?」
「だって…代表取締役だぞ」
「代表…偉い人ってこと?」
「平たく言えば社長って事ですよ」
そんな班乃の言葉に今まで騒いでいた植野が瞬でフリーズする。その隣では職業を知っていたはずの安積までもが固まっており、その様子からはどうやら役職までは知らなかったようだ。
寂れた音が聞こえて来そうなほどのぎこちない動きで月影を見た2人を出迎えたのは、先程までと変わらないはずなのに何故か違って見える月影の笑顔だった。
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