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慰弦

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- 13章 -

- 再会 (続) -

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「どこでどうなるか、本当に分らないものだね」

「え?」

「なんでもないよ」


班乃の計らいで、今は美術準備室に2人しか居ない。

月影は先程まで自分が座ってた椅子に、安積は窓枠に腰をかけていた。

暫く沈黙が続く。

お互い何から話したら良いのか図りかねているのだろう。


「元気にやってるみたいだね」

「…うん。ひじりは?」

「元気だよ。今も絶賛お仕事中だし」

「はい?」

「ネタに詰まってね。そういう時はここに来てる。色んな人が居るし、学校って落ち着けるし…あと仕事ひと段落着いた時とかも来てるかも?」

「なにそれ、学校大好きだなw」

「あはは」

「ってかネタ詰まりって…何の仕事してんの?」

「デザイン事務所。洋服がメインだけど、結婚式場の会場作りとか色々やってるね」

「マジで!?すげー…」


…違う、そんな話がしたかったわけじゃない。

いや、近状を知りたかったのは嘘ではないが。

大きく息を吸って、安積は呼吸を整える。

ずっと言いたかったこと。頭の中で整理をして口を開きかけるが、それより先に月影が口を開いた。


「どうして俺の事が分ったの?両親は秘密にしてた筈だし、孤児院から漏れるとも考えられないし」


反射的に月影へと視線を合わせると、真っ直ぐにこっちを見ていた。

本当に不思議に思っているようだ。

『…もしかして、凄く会いたくなかったのかも?』

今まで会いたいという自分の気持ち1つで動いていたけれど、そういう事もありえるんだと今になって気がついたがもう遅いだろう。

不安を隠しながらも、月影の問いに応えるべく口を開いた。


「…中学の時にさ、授業で戸籍謄本を使ったんだよね。家計図を見てうんちゃらーって」

「そんな授業あるんだぁ。知らなかった」

「うん、俺も戸籍謄本ってなんだろうって思ったw でも授業の前の日までその事忘れてて、慌てて家に帰ったんだよね。そしたらたまたま父さんが居て、戸籍謄本が必要だって言ったら凄く困った顔してさ」

「だろうね…」

「でも、すぐ一緒に役所行こうって言ってくれたの。その時はなんでか分らなかったんだけど、その帰りに父さんが珍しく2人だけでご飯食べに行こうって…その時に聞いたんだ。昔一緒に住んでた親戚の人は、本当は腹違いの兄弟で、ひじりの母親はひじりを生んで直ぐに亡くなったってこと」

「そう…」

「でも、今どこでどうしてるかってのは教えてくれなかった。なんとか問い詰めて住んでた孤児院だけは聞けたんだよね」

せい…お前もしかして」

「ごめん。その孤児院の場所調べて行っちゃった。でもさ、院長も先生達もなんも教えてくれなかった。…まぁ、当たりまえなんだけど。でも諦めきれなくて何度も通ってる内に先生の一人が、聖《ひじり》が通ってた高校だけ教えてくれたんだよね」

「……その先生って、もしかして咲って名前?」
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