184 / 1,055
- 13章 -
- 再会 -
しおりを挟むHRは班乃が少し遅れて入ってきた事以外いつも通りに滞りなく終わった。朝練の時にすでに話を聞いていた班乃は、今だ暗い顔をしている安積に声をかける。
「まだ気分なおりません?」
「ん?んー…直そうとは思ってるんだけど。ごめんね、心配かけて…」
「そんなこと気にしなくて良いんですよ。でも貴方がそこまで落ち込むなんて…一体何の夢みたんですか?」
次の授業は移動の為、教科書もろもろを用意してから安積の前の席に座る。勿論班乃の席ではないが、誰も気にしないだろう。
「ん―…なんていうかなぁ。小さい頃に怪我させちゃった人が居てさ。その時の夢」
「怪我ですか?小さい頃なんて、よくある話だと思いますけど…」
「うん。まぁ、そうなんだけどねぇー」
暫く、口の中でうにゃらうにゃら唸っていたが、“夢だしな”と、暗い気持ちを吹っ飛ばすように頭をふって勢い良く立ち上がった。
「あっきー朝から暗くてごめんねー」
「いえ、構いませんよ。誰だってそういう時はあります。力になれるか分かりませんが、なにかあったなら言ってくださいね?」
「うんっ、ありがと!頼りにしてるっ!じゃ、ちょっと早いけど行こっか?」
急いで教科書の準備をした安積は班乃と並んで教室を出る。教室は1つ下の階にあるのだが、下へ降りる階段の前に5~6人ほどの人だかりが出来ていた。
「あれ、なんだろう」
「…あの場所で人だかりが出来る事とすれば、多分」
「あっ…!!」
班乃の言葉を待たずして安積はその人だかりに向かって駆け出していく。その人だかりの中には植野が、そして少し離れた所で鈴橋が壁にもたれ掛かり退屈そうに眺めていた。
「がっくん!!」
「あぁ、安積か。なんだ、元気になっt」
まだ喋っている鈴橋の肩に勢い良く両手で掴みかかると、言葉を飲み込み驚いたように安積を見つめる。
「ねぇっ!!この人だかりって撫子の君っ!?」
「えっ?あぁ、そうだけど…そうか、お前はまだ見た事ないんだっk」
そしてまたもや鈴橋の言葉後半を聞かずして、美術準備室を覗きこんでいる植野へと駆け寄っていった。
「…なに、あいつ」
「余程会いたいんでしょう」
「いっ!? …たんですかっ、会長っ。すいません、気がつかなくて…」
「いえ、僕こそ驚かせてしまってすいません。どうも、さっきぶりです」
にこやかな笑顔を浮かべ人だかりに目をやった班乃につられるようにして、鈴橋も再びそちらを見やる。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる