Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
178 / 1,055
- 12章 -

- 本番と本心 -

しおりを挟む


“言わないでっ!”とでも言っている様な目をした安積等のご期待に応え適当に誤魔化した班乃だったが、鈴橋の機嫌の良さが気になっているのは自分も同じだ。

『ここまで上機嫌なら、悪いことがあったわけではないでしょうし』

別に聞いてはいけない事でもないだろうと、それとなく聞いてみる事にした。


「それより学君」

「はい?」

「なにか良い事でもありました?」

「え?なんでですか?」

「いえ、少しばかり上機嫌なようでしたので」

「あぁ…」


鈴橋に内緒話をしていたのが後ろめたいのだろうか。両手を握り合っている安積と植野だったが、2人から向けられる視線はまったく違う色が込められている。

そんな2人を不思議そうに一瞥した鈴橋は無視を決め込む事に決めたのか、微かに笑みを湛え班乃へと視線を戻した。


「仲直りしたんです」

「仲直り、ですか?」

「はい。色々と分からないことだらけでスッキリしない日が続いてたんですけど…。それが今日、解決したんです。まぁ、全部ではないんですけど」

「そう、ですか。それは良かったですね」

「ありがとうございます。じゃぁ、俺部活行きますね」

「えぇ。ではまた」


清々しい笑顔と共に颯爽と教室を後にする鈴橋を見送ってから、いまだ手を繋いでいる安積等へと顔を向けた。


「もしかして…綾」

「Σえ!?なっ、なにっ?」

「がっくんと喧嘩してたの?」

「いやっ…してない…よ」

「そう?じゃぁ別の人か。…でもまっ、最近がっくん様子変で心配だったし、解決したなら良かった良かったっ!」

「…そうね」

「仲直り、ねぇ?」

「Σ (;´д`)!?」

「よしっ、じゃぁ俺も部活行こうっ!」

「あ、僕少し用事があるんで先に言っててください」

「かっ、かいちょー…?」

「分かった!じゃぁまた後でっ!」

「はい、また後で」


そうして今度は心労から解放された安積が颯爽と教室を後にする姿を見送った後、背中を丸めて出来る限り存在を消そうとしている植野へと容赦なく振り向いく。


「それで?実を結んだような、ないような、とは?」

「…えっと」

「お付き合いには、至らなかったと?」


教室を見渡すと既に他の生徒は部活へと向かっており、いつの間にか班乃と植野だけになっている。誰も聞いていない事を確認してから、植野は観念したように口を開いた。


「そうだよな。会長には色々相談乗ってもらったし…」


班乃に鈴橋への気持ちを共有した後、すべてを打ち明けて何度か相談に乗ってもらっていた事があった。もちろん、今回の事だってそうだ。

『ずっと手を煩わせてきたわけだし…協力してくれた人に隠すのも、人として違うよな』

誰も居ない教室と言えど大っぴらに話すのは気が引けて窓辺へと移動すると、それに続くように班乃も移動しそれぞれ適当な席へと腰を下ろした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

処理中です...