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- 12章 -
- 本番と本心 -
しおりを挟む「で?」
「で…って…」
昼休みが終わり、部活へ向かうため賑わう教室。会話をする班乃と植野の後ろでは安積と鈴橋がじゃれている。
「直ぐに教室向かったら2人とも居ないんだもんっ!」
「悪い、所要で…」
「ちょー寂しかったっ!」
「そう。ありがとう」
「…えっ?」
「なんだよ」
「がっ、がっくんがお礼言って吃驚したとか思っても言わないっ!」
「言ってるって」
「っていうか、俺もありがとうっ!」
「…はぁ?」
「賞は逃して目に見えた成果はなかったけどさっ、今日はパーフェクトで歌えたんだよっ!ずっと付き合ってくれてたがっくんたちのおかげっ!ちょー嬉しかった!だからありがとうっ!!」
「そうか、良かったな。おめでとう」
「えっ?……う、うん」
「…どうした?」
「なんでもない」
「はぁ」
そして少し離れた場所からその会話を聞きながら、植野はにこやかに笑う班乃にさながら尋問のように問われていた。
「貴方と昼休みにどこかに行ってから、学君がやけに素直なんですけど」
「うん。かわいい…」
「…学君と一緒にどこかへ行ったと聞いて心配してたんですよ?戻って来たと思ったらこうもいつもと調子が違うなんて…友達として急な変化に心配がつのるのですけど?」
「えっ?えーと…それは…」
「はい?」
「……身を結んだような、結んでないような」
「というと?」
『というと、と言われましても…』
どう説明しようかと考えていたその時、鈴橋と話をしていた安積がひっそりと2人へと近づき、まるでひそひそ話しをするように班乃の耳元へ手を添え口をよせた。
「ちょっと、あっきー…なんかがっくんが変なんだけど?」
「なにがですか?」
「いや、なんていうか…ちょー優しいって言うか、機嫌が良過ぎるというか」
「良い事じゃないですか」
「うん、良い事ではあるんだけど…うん…」
「とっても良い事でもあったんでしょう」
「良い事?」
「えぇ、良い事。ね、綾雪?」
「えっ!?うん、そうなんじゃない?」
「そうなの?」
部活へ行く準備をしていた鈴橋だったが、ひそひそと会話をする3人を訝しみ側へと歩みを進める。しかし、会話に夢中な3人は気がつく事なく会話を続けていく。
「昼休みがっくんと一緒に居たんでしょ?綾なにか知らんの?」
「…えーと、まぁ、ね、会長?」
「安積と2人寂しくお昼ごはんを頂いていた僕には何のことやら」
「会長ぉー…」
「もしかして綾も分からないの?…じゃぁがっくんに直接聞いてみよっかな」
「ちょっ、せーちゃっ」
「俺がどうしたか?」
「「Σοдο!!!???」」
唐突に声をかけられ同時に勢い良く振り向いた植野と安積に、呆れたような鈴橋の視線が突き刺さった。
「なにそんなに驚いてんだよ。別に忍んで近づいたわけでもないのに」
「いっ、いやっ…それはそうなんだけどっ」
「…会長、なんかあったんですか、コイツら」
「いえ、ちょっとお話に夢中になりすぎて注意力散漫してただけですよ」
「…そう、ですか」
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