175 / 1,055
- 12章 -
- 本番と本心 -
しおりを挟む「駄目…なんて、そんな…駄目なわけないじゃん」
「…そうか。良かった」
今一度、鈴橋の言葉を頭の中で反芻させる。しっかり考えないと自分の都合の良いようにだけ捉えてしまいそうで。…だが、今の鈴橋の言葉は…
「なっ、なになにっ!?なによ!ちょー吃驚したんだけどっ!?」
「うっ…るさっ! なんだよ急にっ!?」
「だってさっ!もう、本当に嫌われたと思ってたし!!すっげぇ避けられるしっ、めっちゃ悩んでんのにがっくんは見たことないような笑顔で笑ってるしっ!」
「はぁ?…ちょっと落ち着け。なんの話してんだ、お前」
「…嫌われたと思ったよ。気持ち悪いって思われて、このままずっと避けられると思った」
なのに、フラれたというには少しおかしな言葉だった。確かに同じ気持ちは返せないとは言われたが、家族とも友達とも違う好きという言葉には鈴橋自身が自分の気持ちにまだ気がついていないという可能性が、自分にも、同じ気持ちを返してもらえるという可能性が多いに含まれている気がした。
「避けてたのは申し訳ないって思ってるけど…大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。だって気持ち悪いって思うでしょ、普通。近寄りたくもないって思われてもしょうがないし…なのに…」
「なんか、さっきから色々と意味が分からないだが…気持ち悪いとかなんとか、なんの事だよ」
「なにがって…同性に告白されるなんて気持ち悪いって思ったでしょ…?」
「……あぁ、それ」
「それって…」
「……前に家に泊まりに来たとき」
「え? …うん?」
話が少し飛んだ気がするが、鈴橋と話をする上ではあまり珍しいことではない。話が飛んだようで最後にはきちんと今の話につながるというのは既に承知済みな事だしと、このまま聞くことにした。
「部屋で俺とお前と紗千で川の字で寝てたとき」
「うん」
「お前…俺に…」
「……え?」
「………俺、に」
お互い口を噤む。思わず鈴橋へと顔を向けると同時に鈴橋が顔を背けた。その顔は耳まで赤くなっている。
「えっ!?ちょ、もしかして…起き、てた、とか?」
「…………」
やばい、死にそう。
恥ずかし死しそう…。
「あの時、なんでとは思ったけど…気持ち悪いとか…考えなかったな」
「…マジで?」
「嘘ついてどうする。でも、不思議だな。なんでだろ」
耳まで赤くしながらも不思議そうに首をかしげる仕草に、安著感と微笑ましさがこみ上げてくる。一気に体中から力が抜けて、無意識に口から笑い声が出た。
行き成り笑いだした植野を怪訝そうに振り返った鈴橋の頬に手を添えると、拒否するでもなくただただ自分を見上げてくる。
「…楽しいか?男の頬なんで撫でて」
「楽しい….っていうか、幸せ、かな」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる