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- 11章 -
- おたまじゃくしにしか見えない -
しおりを挟むそしてそれからは予期していた通り、さまざまな香りと黄色い声に囲まれ、ジュースをちびちび…
このテンション…辛い…
こういう時、鈴橋のあのローテンションが愛おしい…
もう、スチール缶投げつけられてもいいから今すぐ会いに行きたい…
そんな事を脳内で考えながら、開放されたのは1時間後。
女性達の指名客が来てくれたおかげで、今日はわりと早く開放された。
「あ、あの。俺帰ります。ありがとうございました」
「いえいえ、若ちゃんのお世話大変だろうけど、頑張ってね?」
「ありがとうございます。……あの、あんな母ですけど、これからもよろしくお願いします」
そういって軽く頭を下げる植野の頭を、店長は優しくなでた。
「もちろんよ。家の稼ぎ頭だからね。それに、尊敬もしているのよ? このご時勢、女手一つ、こぉーんな良い子を育て上げるなんてね」
「…ありがとうございます。でも、俺を育ててくれた母は、母1人じゃないと思ってるので」
「……そう。ありがとう」
もちろん血の繋がった母は1人だが、そうじゃない母も居る。この店の “ ママ ” は、その中の1人だった。
気恥ずかし気に言葉にした植野を見つめる “ ママ ” の目は、その言葉を証明するかのような優しげな眼差しをしていた。
「それじゃ、もう遅いし気をつけて帰りなさい」
「はい。飲み物、ご馳走さまでした」
「お粗末様でした。そうそう、店の子達も綾雪君が来ると元気になるし、またいつでも来て頂戴。用がなくてもいいし、客じゃなくて、息子としてででも」
「あー……それは、ちょっと、考えておきます」
気持ちはもちろん嬉しいが、出来れば避けて通りたい。あいまいに笑うとまぶしい笑顔のママからそのまま数歩後ずさり、植野は急いでお店を後にした。
そして…
「疲れた…」
肉体的な疲れは肉体だけで済むのに、なぜ精神的な疲れはこんなにも体力まで奪うのだろうか…
重い体を引きずってなんとか原チャにまたがると、我が家と言う第2の安らぎへと急ぐ。
…本当は安らぎNO1の鈴橋に会いに行きたいところだが、今から行っても確実に無視されるに違いない。というか、迷惑でしかない。
そして勝って知ったるなんとやら。自宅への近道にもなっている少し寂しい感じの裏道に入ったとき。
見慣れた姿がホテルの前で女性と口論している姿を見つけてしまった。口論というか、女性が一方的に声を荒げているようにも見える。
丁度信号待ち。
なにを話しているかは分からないが、あまり良い雰囲気ではなさそうだ。
信号が青に変わるまで、その2人に目が釘付けになる。言い争いは終わったのか、女性がその人物にぶつかるようにして賑やかな町へと姿を消していった。
信号が青に変わる。
進まなきゃ…でも。
でも、どうして…
『…どうして会長がこんな所に居るんだ?』
植野は無意識のうちに原付を近づかせ、大きく息をすうと班乃に声をかけた。
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