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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む『男同士でも出来ない事はないだろうけど…女の子の経験だって豊富じゃないし…もしその先に踏み込んだとして、痛い思いさせちゃったらどうしよう』
そもそも本来の使い方とは違う使い方をするのだし、もちろん経験もあるわけでもないのでそれは最早未知の領域だ。ならば経験者に聞くのが良いのだろうけど…
『…会長って同性相手の時ってどっちなんだろう。ってか、力になるって言われたからってこんなこと聞くのはー』
「いやいやっ!それ以前の問題かっ飛ばしすぎだな俺っ!?」
「は? なにがだよ?」
「えっ? あっ、いやっ……なんでも、ないです」
「…頭大丈夫か?」
「言い方っww」
思考に沈み込み、あれやこれや考えているうちに知らず知らず声に出してしまっていたらしい。
「えっ、えと、俺今、なんか言った?」
自分が何処からどこまで口走ったのかが分からず恐る恐る確認すると、逆に心配そうな視線が返され申し訳なくなる…。
「それ以前の問題がどうとかって。なにか悩んでるのか?」
「…それ、だけ?」
「それだけだけど…」
「…良かったっ!!」
「はぁ?」
「やっ、なんでもないっ!気にしないで!」
「…そう?」
『良かったぁぁーーっ!』
どうやら肝心な所はちゃんと胸の内に秘められていたようでホッと胸を撫で下ろす。でも、それでもほんの少しだけ、不可抗力ででもバレてしまえばこのモヤモヤからも解放される気がして残念な気持ちもあった。
『…全部は無理でも、ちょっとだけなら』
チラリと鈴橋へ視線を向けるとなおも心配そうに自分を見上げている。それは出会った当初からは全く想像もつかなかった表情で、まるで怪我をした獣に懐かれたような、鈴橋から向けられる特別感が愛おしい。
「…いや、本当はさ、今すっげー悩んでんの」
「そう…。なにかあったのか?」
「んー…」
だからこそだ。思いを伝えてまた昔のように戻ってしまったらと考えるとやはり怖い。今はまだ、関係を壊しかねないことは言えそうもなかった。
「そうね。がっくんが大好きすぎて困っちゃってんの」
「…面白くない冗談だな。心配して損した」
「えぇー、本当なのにっw」
急にスンとした鈴橋が歩調を早めスタスタと歩きだし、その後を急いで追う。今は冗談って捉えられたとしても良い。まだそう思える余裕はある。
『だからさ…あんまり優しくしないでよね』
自分勝手なのは分かっているけれど、そんな思いが沸き上がってしまう。
これ以上好きになってしまったら我慢がきかなくなってしまうだろう。
そうなってしまったら、きっとこの幸せな関係を壊してしまうに違いない。
それでもそれを望んでいるかのように鈴橋から離れられないのを、植野自身が一番理解していた。
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