Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
131 / 1,055
- 10章 -

- 現実と夢の指輪 -

しおりを挟む


「…でも待ち合わせ時間過ぎても来なかったんです」

「寝坊?」

「さぁ。わかりません」 

「……わからない?」

「えぇ。心配になって、どうしたのかと電話をしようとした丁度その時、横断歩道の少し向こうから全力で走ってくる彼女が見えたんです。信号が青に変わるまで、すっごく申し訳なさそうな顔をして手を合わせて謝ってくるので、どうでもよくなってしまって」

「可愛いっw それは確かに怒る気もうせちゃうね」

「まったくですよ。でもね、彼女の笑顔をみたのは、それが最期だったんです」

「え?」

「…雪が振り出したのは多分夜中でしょう。降ったり止んだりしてたので、地面が凍ってたんです」

「…うん」


『凍ってた…って、何て言うんだっけ、そういうの』

どこかで聞いた事がある気がして頭の引き出しを探した。地面が凍る現象。

『凍る…氷の、道……アイス、バーン、だったっけ?』

確か都会の人は雪に慣れてないから良く事故を起こすとニュースで見た気がする。

『事故、を、起こす……』

嫌な予感がする。最悪の出来事を予想してしまった脳内では、幸せそうな2人が一瞬にして悲しみに染まった。


「…恐らく安積の思った通りでしょう。青信号で渡り始めた彼女に、運送用トラックが思いっきりスピンして突っ込んだんです」

「そん、な事って」

「なんだか、TVで見るような事故ですよね。まさか自分の身に起こるなんて思ってもなかったです。…トラックの下からは彼女の、白くて細い腕だけが覗いていて、今まで彼女の体内を流れていた血が、湯気を立てながら雪を溶かしてました」

「……」

「それからは正直、あまり覚えてないのですが、多分、近くに居た人が救急車を呼んでくれて…気がついた時は病院で、彼女の両親と一緒に、綺麗にしてもらって白い布を被せられた彼女を囲んでいました」

「………」

「この指輪は…」


すっと、安積へと左手を伸ばす。その手にはいつものように鈍く光る指輪が嵌められていた。


「その日に、楓に渡そうと思っていたものとお揃いのなんです。…まぁ、属に言うペアリングですね。結局渡せなくて…彼女の指にはまる筈だった指輪、今も持ち歩いてるんですが…」


そういって、班乃は自分の胸元を触る。ネクタイを締めているので見えないが、そこにはきっと、ネックレスとして指輪がかけられているのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...