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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む「…でも待ち合わせ時間過ぎても来なかったんです」
「寝坊?」
「さぁ。わかりません」
「……わからない?」
「えぇ。心配になって、どうしたのかと電話をしようとした丁度その時、横断歩道の少し向こうから全力で走ってくる彼女が見えたんです。信号が青に変わるまで、すっごく申し訳なさそうな顔をして手を合わせて謝ってくるので、どうでもよくなってしまって」
「可愛いっw それは確かに怒る気もうせちゃうね」
「まったくですよ。でもね、彼女の笑顔をみたのは、それが最期だったんです」
「え?」
「…雪が振り出したのは多分夜中でしょう。降ったり止んだりしてたので、地面が凍ってたんです」
「…うん」
『凍ってた…って、何て言うんだっけ、そういうの』
どこかで聞いた事がある気がして頭の引き出しを探した。地面が凍る現象。
『凍る…氷の、道……アイス、バーン、だったっけ?』
確か都会の人は雪に慣れてないから良く事故を起こすとニュースで見た気がする。
『事故、を、起こす……』
嫌な予感がする。最悪の出来事を予想してしまった脳内では、幸せそうな2人が一瞬にして悲しみに染まった。
「…恐らく安積の思った通りでしょう。青信号で渡り始めた彼女に、運送用トラックが思いっきりスピンして突っ込んだんです」
「そん、な事って」
「なんだか、TVで見るような事故ですよね。まさか自分の身に起こるなんて思ってもなかったです。…トラックの下からは彼女の、白くて細い腕だけが覗いていて、今まで彼女の体内を流れていた血が、湯気を立てながら雪を溶かしてました」
「……」
「それからは正直、あまり覚えてないのですが、多分、近くに居た人が救急車を呼んでくれて…気がついた時は病院で、彼女の両親と一緒に、綺麗にしてもらって白い布を被せられた彼女を囲んでいました」
「………」
「この指輪は…」
すっと、安積へと左手を伸ばす。その手にはいつものように鈍く光る指輪が嵌められていた。
「その日に、楓に渡そうと思っていたものとお揃いのなんです。…まぁ、属に言うペアリングですね。結局渡せなくて…彼女の指にはまる筈だった指輪、今も持ち歩いてるんですが…」
そういって、班乃は自分の胸元を触る。ネクタイを締めているので見えないが、そこにはきっと、ネックレスとして指輪がかけられているのだろう。
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