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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む「じゃぁ、また明日」
「はい。また明日」
「じゃねー!」
「おう!腹出して寝んなよ!」
「お母さんっww」
バス組の植野と鈴橋。
電車組の班乃。
徒歩の安積。
バス停で植野と鈴橋と別れ、駅に向かう班乃に安積がいつもくっついて行く、と言うのが帰りの常である。
そして、駅に向かうまでにある公園で安積と班乃はよく演劇の練習をするのだが、今日は公園ではなく駅デパに来ていた。その目的は部活で使用する大量の布地の買い出しだ。
「これで全部、かな?」
「恐らくは。…大丈夫ですか?もう少し持ちましょうか?お嬢様?」
「結構よっ!1人で持てるわ!」
別に誰が行っても良かったのだが、この間途中で辞めてしまった倉庫掃除の事が引っかかって居たのだろう。
安積が自から申し出たので、それならと班乃も一緒に来たのだった。
…とても一人で持ちきれる量ではなかったから。
「ってかまじありがとうあっきー!申し出たまでは良かったけど、まさかこんな量とは」
「どういたしまして。でも気にしないで下さい。自分も使う物ですし」
「あっきーちょー優しいっ!大好きっww」
「ありがとうございます。僕もバ可愛い安積が大好きですよ。さて、買い出しも終わりましたし、どこかで少し休んでいきますか?」
「なんか一部放送事故があったけど気にしない事にするっ!とりあえず休憩さんせぇー…重くて指痺れてきた…」
「ぁはは、じゃぁいつもの所…で……」
「あっきー?」
安積より少し後ろを歩いていた班乃の言葉が不自然に途切れ思い振り返ると、まるで見付けたくないモノを見つけてしまったような表情で1点を見つめその動きを止めていた。
「あっきー? どうしたの?」
「……」
「ねっ、ねぇあっきー?」
「あっ…すいません。少しぼっとしてしまって…早く行きましょう」
『ぼっと?』
確かにそう言うことも出来るかもしれないが、今のは “ そうなんだ ” で済ませられるような表情ではなかった。見つめていた先を見てみるがただ人々が行き交うだけで特になにもない。
『もしかして、会いたくない人でも…居た?でも、あっきーに?』
人当たりも良く誰かと対立なんてしそうにもない。そんな班乃に避ける程の人が居るなんて考えづらい。
しかし力強く腕を掴む手が問いかける間は与えてくれそうもなく、腕を引かれるまま踏み出した瞬間…
「明くん?」
班乃が見ていた方向、今は自分達の背後から不意に声がかけられた。
『なんだろう、最近も似たような事があった気が…』
その声が女性だったからかもしれない。気がすると思うよりも先に、安積の頭の中を “ あの夜の女性 ” が駆け巡った。
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