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- 10章 -
- 現実と夢の指輪 -
しおりを挟む「綾っ、がっくんっ! おまたせーー!」
「すいません、遅くなりました」
予定より長引いてしまった部活を終えた安積と班乃は小走りで校門前へと向かい、自分たちを待っていたであろう二人へと声をかけたのだがどうも様子がおかしい。
並んで立って居るにも関わらず鈴橋はそっぽを向いたまま言葉も発さず、植野は笑顔を浮かべ手を振るがいつものような明るい声は鳴りを潜めていた。
そんな2人の様子に戸惑い伺うような安積の視線が班乃へと向けられるが、班乃にも分かる筈がなく小さく首を傾げあう。
「大丈夫ですか、2人とも。なにかありました?」
「…もしかしてがっくん、めちゃくちゃ機嫌悪い?」
「別に」
『某大物女優かw』
咄嗟に頭に浮かんだ感想だったが、これを口にすれば鈴橋の不機嫌さに拍車をかけそうなのであえて黙っておく。そんな選択肢を咄嗟にとれた自分に “ そろそろがっくんの性格を理解してきたんじゃね? ” と自画自賛する安積は誰も知らない。
なにやら安積までもが黙ってしまったが、恐らく安積に関しては放っといて大丈夫だろうと一旦放置する事に決めた班乃は植野へと声をかける。
が、返事がない。
どこを見ているのか分からない目をしているが、一応笑みを浮かべているのを見れば、ただの屍…という訳ではなさそうだけれど。
「……安積」
「ぅん?」
「綾雪が変です」
「ぅん……喧嘩してる、訳じゃなさそうだけど」
「ほっとけ。さっさと帰るぞ」
「えっ? あぁ、うん…?」
突如口を開いたかと思えば冷たく吐き捨て、なにも言葉を発しない植野を全力で無視し歩き出した鈴橋だったが、少し遅れながらもそれに続くよう植野も動き出す。
一応意識はあるようだ。
「ねっ、ねぇがっくんっ? 綾となにかあったの?なんかぼっとして心ココにあらずなんだけど」
「別になにもない。そのうち戻ってくんだろ」
「うっ、うーん…そう、かなぁ」
そんな会話を繰り広げている2人から少し遅れて歩く植野に歩調を送らせて横並びになる班乃だったが、まるで気がついてないようで植野からの反応はない。
「ねぇ、綾雪?」
「………」
「…学君と良いことでもありました?」
「へっ!?ななっ、なんっ、なんの事!?」
『分かりやすすぎる……』
あからさまに動揺する植野に、少し前から自身の中に生まれていた疑念が確信へと変わっていく。
黙ったまま先程からずっと浮かべている笑顔は、笑顔、というより、ニヤケ、という表現がよく似合う。
鈴橋の名前を出しただけのこの動揺は、もう答えのようなものだ。
「なんか随分幸せそうな顔してますけど」
「えっ?…そぉ?」
「…実は前から気になっていた事がありまして。率直に聞いても?」
「えっ、やだなんか怖いっ!!」
「…聞いても?」
「…ぁ、はい」
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