114 / 1,055
- 9章 -
- すれ違い -
しおりを挟む「あの、一つお聞きして宜しいでしょうかっ!?」
「え?ぁ、はい、良いですよ?」
鈴橋の言葉に閃いた1つの可能性に胸を高鳴らせながら真剣な面持ちで店長を見つめた。
正直、タイプは全然違うし関わりがあったとは思えない。しかし誰とでもそれなりに付き合えるタイプだ。多少なり関わりはあった可能性はある。それでもあれだけ来たがらなかったなんて、そんなの気にならないわけがない。
「店長さんっ、長谷川鉄司ってご存知ですか?」
真面目な顔をした植野達を、きょとんとした顔で見返す店長。一瞬、勘違いだったか?という考えが浮かんだその時。
「鉄司って…えぇっ!てっちゃんの事!?君達てっちゃんの知り合いなのっ!?」
「はいっ!!」
「長谷川さんのお知り合いだったんですね」
「そうっ!!同級生!ぅわぁー、懐かしぃ!いつもてっちゃんと、もう1人仲良い子と3人でつるんでたんだよっ!なんなら今でも良く一緒に飲みに行ったりするしっ!!」
「うわぁー、意外すぎるっ!!めっちゃ仲良しじゃないですかっ!」
「そうなのっ、めっちゃ仲良しなのっ!えーっ、嬉しいなぁ、てっちゃんの知り合いが来てくれるなんて!あ、今さらだけど、秋山華暖ですっ。よろしくねっ!」
長谷川の名前を出した瞬間急に砕けた口調になった秋山が先程までとは違う無邪気な笑みで手を差し出す。それに応えるように手を差し出し握手を交わしながら植野達も順々に自己紹介を済ました。
きょとんとした顔。
昔を懐かしむ時の幸せそうな表情。
今でも仲良く出かけると言う嬉しそうな顔。
ころころ変わる表情。
どれもこれも様になっている。
その証拠に周りの女の人達の視線を一心に受けていた。
「長谷川さんが来たがらなかった理由がなんとなく分かった気がする」
「確かに…」
「え?…あぁー、そうなの。誘ってもなかなか来てくれないんだよね。でもしょうがないかなって。だってー」
悲しげな表情を浮かべた秋山は、人差し指を口に当て2人にしか聞こえないよう潜めた声で囁いた。
「てっちゃん、ミーハーでブリッコな女の子ちょー嫌いだもんね。正直俺も、鬱陶しいって思う時しょっちゅうだし」
「そうそう…って、えっ!?」
「あっ、秋山、さん?」
「内緒ねっ!w 」
「「あっ、はい…」」
「ふふっ、ありがとうございます! では私はそろそろ仕事に戻らせて頂きますね。お話しできて嬉しかったです。どうぞ、ごゆっくりしていって下さいね」
コロリと店長モードに口調を戻した秋山は爽やかな笑顔を張り付けその場を離れていき、2人は突如吐き出された毒にその後ろ姿を見えなくなるまで呆然と見送るしかなかった。
もちろん裏に入るまで、秋山は女の子達に笑顔を振り撒く事を忘れない。
「…商売上手」
「大人って怖っ…」
秋山が去った後怯える2人などお構いなしに突き刺さるのは興味津々な女性達の鋭い視線だった。只でさえ圧倒的女性が多い中で浮いていたのに、彼女らの注目のまとである店長と私的な会話をした上に内緒話までもしていたのだからー
「植野…」
「うん…食べたらダッシュで帰ろう」
捕まったらなにがあるか分からない。
そんな中でもしっかりとケーキを堪能する鈴橋を尊敬の眼差しで見つめ、食べ終わり会計を済ませた後近寄ってきた女性達の声を全力スルーした2人は、息を絶え絶えになんとか安全な帰路についたのだった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる