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- 9章 -
- すれ違い -
しおりを挟む「…あ、れ? ……えっ? あっ、あっきー!?」
「……大丈夫ですか?」
「いやっ、俺よりあっきーでしょっ!?大丈夫!?」
「えぇ、まぁ…思ったより、軽かったので…」
心臓が騒がしい…
瞬時に頭を過った最悪の事態に咄嗟に走りだした班乃は、考える余裕もなく安積へと覆い被さりその衝撃を自身で受けたのだが、言葉通り衝撃はかなり軽いものだった。
『あぁ、もう……こんなに軽いなら押し飛ばすだけで良かった』
なんだか大仰しい対応をしてしまったようで気恥ずかしさが沸き上がるが、なんともなかったなら良しとすべき所だろう。
ゆっくり上体を起こすと下敷きにしていた安積が怒りの表情でパッと振り、班乃の両肩を力一杯掴んだ。
「もうっ!! なにしてんのっ!?重たいもん入ってたらどうすんのっ!?怪我しちゃうでしょう!?」
「……それ、僕に言います?」
「怪我するよりされる方が嫌だもんっ!」
「それには同意しますよ」
「っ、そうかっ!!ごめんっ、ありがとうっ!!」
「どういたしまして」
必死の形相で怒りながらも律儀に謝罪と感謝を述べる姿がなんだか微笑ましい。自然と口角が緩みそうになるが、それよりも先に嫌な空気が鼻腔をつく。
段ボールは軽く、怪我はなかった。
だがー
落ちてきたダンボールは容赦なく、半年以上の誇りを2人の上へと撒き散らしていた。
『早くここから出ないとー』
急いで立ち上がり安積の手を引こうとするが、どうやら様子がおかしい。再び隣へとしゃがみこみその肩に手をそえた。
「……安積? どうしました?」
「…ゃっ、あの……ごめん、あっきー…ちょっと先、出てて…くんなぃ?」
「…何故です?」
「なぜって…良いからっ!……はやっー」
言葉を言い終える事なく途切れさせたその口からは、明らかに普通ではない呼吸音が漏れだし始めた。
眼前でうずくまった安積は小さく体を震わせながら、テンポの短い呼吸を刻んでいる。細い管に無理やり空気を送り込んでいるような、嫌な音を鳴らしていた。
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