93 / 1,055
- 9章 -
- すれ違い -
しおりを挟む大半の生徒は本人も教師も言っているのだし嘘ではないのだろうと信じているようで、学校側が許可しているのならとヘイトも買っていない。これは安積の人となりも手伝っているのだろう。
しかし班乃は、安積や教師の言い分は半分本当で半分が嘘なのではと疑っていた。
否、それはほぼ確信していた。
資料を取りにいく時に浅くなる呼吸音。
潔癖症とも思えるくらい片付けられた安積の部屋。
時折する聞き覚えのない嫌な咳。
たまたま見かけた鞄に入っている吸引式の薬。
部活を選ぶ際の「運動する?」の言葉。
これだけの判断材料があるのだ。間違っては居ないだろう。
だが、本人が隠している上に教師もそれに協力しているとなると、簡単に聞き出すことは出来ず今に至っている。
『知られたくないなら聞かないでおくけど、表立って協力出来ないのももどかしいなぁ。まったく、弱みを見せられないなんて不器用な子ですね』
そんな事を考えながら安積の後ろ姿を見送るが、その考えは自身にも突き刺さるものがあり苦々しい気持ちを溜め息と共に吐き出した。
もっと素直に生きられたらいいのに。
素直に甘えて、素直に頼って、素直に自分を曝け出して。
それを邪魔するプライドなんて塵ほども役にたたない。
そんな事は分かっているのだが “ 分かっている ” というのと “ 実行する ” というのは果てしなく違う意味を持ってしまうのだ。
実行に至るまでの壁は分厚く、そう簡単にぶち破ることも乗り越える事も出来ない。
いつか訪れるかもしれない自分を変える切欠を待つ。それしか今の自分たちに出来る事はないのだろう。
「…あっ」
思考に沈んでいた班乃は、だいぶ自分がそこに立ちすくんでいた事に気がついた。
「遅刻は避けたい所ー」
くるっと身を反転させ、グラウンドへと早歩きで向かうのであった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる